横田英史の読書コーナー
実践 フィジカルAIの教科書〜現実世界へ歩み出すAIの技術と活用事例〜
株式会社日立製作所 AI CoE、リックテレコム
2026.9.8 10:38 am
CES 2025で米NVIDIA社CEOのジェンスン・フアンが次のフロンティアとして挙げ、日本政府が戦略分野として位置づけるなど、今やメディアで見ない日はない「フィジカルAI」。本書は、その基本概念から要素技術、適用事例、今後の展望までを網羅した1冊である。文章は構造化され、豊富な図や写真、表を効果的に使っており直感的に理解しやすい。最新の研究成果をカバーする参考文献も充実している。AIの倫理面での問題に言及していないのは残念だが、入門書・教科書として手元に置く価値は十分にある。
本書は4つの章で構成する。「フィジカルAIとは?」に始まり、「フィジカルAIの基盤技術とアーキテクチャ」「産業分野に見るフィジカルAIの活用事例」「今後の展望」へと展開する。フィジカルAIの基盤技術として取り上げるのは、ロボット基盤モデル、世界基盤モデル、デジタルツインの3つである。ロボット基盤モデルはフィジカルAIの「行動」を担い、世界基盤モデルはフィジカルAIの「知覚と推論」を支え、最後のデジタルツインは「仮想空間で検証と学習へととなぐ役割」を果たすと整理する。
事例が豊富なのも本書の魅力の一つである。製造業、物流、自動車、鉄道、電力と取り上げる分野は幅広い。類書である「基盤モデルとロボットの融合〜マルチモーダルAIでロボットはどう変わるのか〜」を本書評で取り上げたが、本書の方が現場寄りの視点で書かれている。ちなみに執筆・監修は日立製作所のAI部隊が手掛けている。“日立臭さ”や宣伝臭さが皆無とは言わないが、一般的な技術解説書として許容できる範囲に収まっている。
書籍情報
実践 フィジカルAIの教科書〜現実世界へ歩み出すAIの技術と活用事例〜
株式会社日立製作所 AI CoE、リックテレコム、p.320、¥3520

















