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横田英史の読書コーナー

おどろきの刑事司法〜“犯罪者”の作り方〜

村木厚子、講談社現代新書

2026.8.25  10:35 am

 郵便不正事件で冤罪に巻き込まれた元厚生労働事務次官・村木厚子が、「有罪率99.9%」を誇る日本の刑事司法の歪みを明らかにするとともに、正常化にむけた提言をまとめた書。164日に及ぶ勾留体験や数々の冤罪事件を丹念にたどりながら、「日本の刑事司法は奇妙で恐ろしい状況にある」と警鐘を鳴らす。元官僚らしく語り口は冷静だが、関係者を実名で取り上げるなど迫力は満点だ。取り調べの可視化(録音録画)、証拠開示と再審制度の見直しなどの改革案は説得力十分である。
      
 本書を読むと日本の検察、裁判所、法務省の救いがたい惨状がよく分かる。検事の作文で作られる供述調書、証拠の改ざんや捏造、「人質司法」と呼ばれる長期拘束など問題山積である。さらに深刻なのは、日本の検察や裁判所、法務省、警察、刑事法の研究者が揃いも揃って改革に後ろ向きな点である。そもそも閉鎖的な「刑事司法村」の住人は、反省という言葉が辞書にないらしい。マスコミも捜査機関の広報部と化しており、本来の監視機能を果たしていない。判決文によく登場する「著しく正義に反する」という文言は、司法界隈にこそピッタリ当てはまりそうだ。
      
 ちなみに「無罪の6条件」というものがあるらしい。①タマ(被告人)がいい、②筋がいい、③弁護士が優秀、④裁判官がいい、⑤検察官が無能、⑥運が良いだが、有罪率99.9%もむべなるかなである。この書評でも冤罪事件を扱ったノンフィクションを何冊か紹介してきたが、論点のまとまりの良さでは本書に軍配が上がる。日本の刑事司法の現状を知ることができるお薦めの1冊である。

書籍情報

おどろきの刑事司法〜“犯罪者”の作り方〜

村木厚子、講談社現代新書、p.320、¥1320

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。