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横田英史の読書コーナー

日本史の宝箱〜史料をめぐる52の秘話〜

東京大学史料編纂所、中公新書

2026.7.25  10:27 am

 東京大学史料編纂所の所員52人が、史料にまつわるとっておきのエピソードを綴った書。配偶者をめぐる藤原頼通(道長の子ども)と一条天皇の確執話など、人間味にあふれ現代にも通じるホットな話題が豊富で、最後まで飽きさせない。史料解読のプロだけではなく、史料の整理や複製、IT化などを担う専門スタッフも執筆しており、話題はバラエティに富んでおり、とても楽しめる。評者のような歴史好きにはたまらない内容だ。ちなみに東京大学史料編纂所は、奈良時代から明治維新期までの古文書や記録などを収集し、史料集を編纂・刊行している東京大学付属の研究機関である。
     
 本書は興味深いエピソードが満載だ。天皇家で皇位に就かなかった者の出家話、北条泰時の二日酔い、長屋王の従者が密告者を斬殺した事件、密貿易の隠蔽工作、天皇の執務・生活空間の間取り図、ペリー来航時に江戸で頻発した爆発事故などが紹介されている。
     
 なかでも江戸の爆発事件は実に面白い。ペリー来航によって火薬の需要が拡大した際に、一攫千金を狙って鼈甲屋や質屋、材木屋、雪駄屋、果ては居酒屋などが火薬を扱い始めた。そして、こうした新興商人が備蓄した火薬が、江戸各地で頻繁に爆発事故を起こした。
     
 さらに嬉しいことに、日本では平安時代を最後に使われなくなった幻の塗料「金漆(ごんぜつ)」の話も取り上げている。参考文献として、評者が社長を務める観濤舎の書籍「金漆 Gonzetsu〜幻の塗料「金漆」とその復元〜」を挙げてくれているのも、個人的にはとても嬉しい。

書籍情報

日本史の宝箱〜史料をめぐる52の秘話〜

東京大学史料編纂所、中公新書、p.296、¥1210

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。