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ET&IoT Westが2年ぶり開催、DX推進に向けアプローチ

2021.7.15  10:39 am

ET&IoT Westが2年ぶり開催、DX推進に向けアプローチ

ET&IoT West 2021レビュー ~「DXの社会実装を加速するエッジテクノロジー総合展」をテーマに実施

組込みシステム技術協会(JASA)が主催するET&IoT West 2021が7月1日(木)と2日(金)、グランフロント大阪コングレコンベンションセンターで開催された。2020年は新型コロナウイルス感染症が拡大した影響で開催中止となったため、2年ぶりの実施となった。
  

今回はセミナー参加を含め55社・団体が出展。会場には約2,900人の来場者が集った。

リアル展として再開できたとは言っても、そこは未だコロナ禍にあるなかで、直前まで来場を決めかねた人も少なくなかったようだ。ただ昨年来、技術動向に接する機会が減少していたことから、最後は「最新のテクノロジーに直接ふれる絶好の機会」であることが多くの人の背中を押した格好だ。
   
ET&IoT展は、2018年の開催から“エッジテクノロジー総合展”として、クラウド側からより現場に近いエッジ側へと組込みの技術やソリューションの重心が移る状況をうまくキャッチアップし、情報を発信してきた。以前から“会場に来れば翌年の技術トレンドがつかめる”とされた発信力には定評がある。エッジへの着目もどの展示会よりも早かった印象で、総合技術展としてのプレゼンスを高めてきている。
   
そして今回、メインのテーマとして掲げたのがDXで、「DXの社会実装を加速するエッジテクノロジー総合展」をタイトルに、「DXいうても、デラックスとちゃうで~」と大阪らしいノリも加え実施された。熱心に質問する来場者がつめかけた展示会、立ち見が出るほど盛況だった複数のセッション、大阪(関西)らしさがキラリと光ったWest独自企画など基調な情報を発信した。
   

DXに向けたIoTアプローチ、エッジAIなど関心集まる

ET&IoT Westが2年ぶり開催、DX推進に向けアプローチ
賑わう出展社ブース

テーマとするDXは、製造や小売り、物流や病院など、あらゆる業種で進みつつある。データによりビジネスを変革しようとするもので、ビジネスのさまざまな情報をすべてデータ化してデジタル基盤上で処理し、圧倒的な効率化を図るとともに新たなビジネスやサービスの価値創出につなげていく。
そうしたなかで、エッジコンピューティング環境の重要性がますます高まっている。大量なデータが生成されるなか、企業競争力の向上に重視されるリアルタイム性高いデータ活用、クラウド環境に残るデータ移送の障害やセキュリティリスクなど課題を解消する基盤となり得るからだ。
   
そうした市場背景を受け、展示会場では、エッジコンピューティングを実現するプロダクトやソリューションを前面に打ち出した出展社、DXに向けたIoTアプローチやツール、現状のシステム課題に対する解決策などDX推進に向け提案する出展社も多く、リアルタイム性の向上にカギとなるエッジAI技術、人とシステムの接点として重要度が増すUX/UI関連のサービスなども注目を集めていた。
設計やセンシング、IoT向けボード、ソフトウエア設計ツールといったETらしい展示もあり、そうした組込み分野をけん引する馴染みのあるメーカやベンダから新たなテクノロジーを備えるソリューションベンダまで揃った格好だ。
初日には「用意した資料セットが、今日で尽きてしまうのではと感じるほど集まってくれた」と話す出展社もいて、出展社と来場者にとって実りの多い展示会だったことは間違いないだろう。
   

際立った“Westならでは”のカンファレス

ET&IoT展は、トレンド動向から技術セミナーまで充実したカンファレンスも大きな特徴。今回も東洋大学の坂村健氏や経済産業省商務情報政策局の和泉憲明氏など10講演が組まれた基調/特別講演ほか、テクニカルセッション、出展社セミナーなど全46のプログラムが実施された。

ET&IoT Westが2年ぶり開催、DX推進に向けアプローチ
基調講演の東洋大学・坂村健氏はリモートで講演した(左)。経済産業省・和泉憲明氏は滑らかな語り口も印象的だった 。
ET&IoT Westが2年ぶり開催、DX推進に向けアプローチ
エントリーレベルから上級層まで網羅するプログラムで、例年満席となるテクニカルセッションは今回も大盛況に。左から慶應義塾大学大学院・白坂成功氏、三菱電機・岩橋正実氏、富士通ラーニングメディア・松尾圭浩氏

Westならではのプログラムと言えば、大阪を中心に活躍中の有識者をパネリストに、毎回ユニークなテーマで議論が展開されるヒートアップセッション。今回はIoT活用、大阪万博後の価値と未来、ET&IoT展の併催イベント・DXイノベーションチャレンジの攻略法、DXを視野に入れたアジャイルによる組織開発考、産官学のDXの取組み、昨年に続きシミュレータによる開催となったETロボコン考察、といったテーマで実施された。

ET&IoT Westが2年ぶり開催、DX推進に向けアプローチ
ヒートアップセッションの様子。「過去参加チームと考えるDXイノベーションチャレンジの攻略法!関西から目指す、イノチャレチャンピオンシップ大会」(左)と、「3哲人と考える『ヘトヘトNIPPONからワクワクNIPPONへの挑戦』~2025大阪・関西万博後の新たな価値と未来~」のセッション

DXイノベーションチャレンジは、イノベーションを生み出すための教育イベントとして、2015年にIoTハッカソンとしてスタートしたアイデアソン。過去のファイナリストチームと今年の参加チームが集い、イノベーションを生み出すことの楽しさや難しさ、コツをシェアしあい優勝の秘策を考察した。
   
大阪のボケとツッコミが飛び交い大いに盛り上がったのが、大阪万博後の価値と未来を議論したセッション。(株)スマイルマーケティング代表・高橋健三氏、(有)セメントプロデュースデザイン代表・金谷勉氏、内閣府 地域活性化伝道師/日本真珠輸出組合専務理事の内海芳宏氏という、マーケティングやブランディング分野における実績豊富な3哲人が登壇、いまの“ヘトヘト”な状況から脱却し、“ワクワク”する未来を生み出す価値観やビジネスの方向について思いのたけをぶつけあった。
DXは、デジタル化により“どのようなビジネスモデルを目指すのか”を定めることが実現の第一歩。新たな発想が求められることでもあり、参加者はそのヒントが得られた有意義な時間となったことだろう。
   
また、ET&IoT 2021が11月19日(水)から3日間、パシフィコ横浜で開催される。「エッジテクノロジーは次なるステージへ ~産業DXを実現する要素技術と応用分野のすべてがココに~」がテーマとなっており、また一歩進んだDX、エッジのソリューションが体験できるだろう。

(樋口泰光)

▼関連リンク
ET&IoT West https://www.jasa.or.jp/etwest/
ET&IoT 2021 https://www.jasa.or.jp/expo/
DXイノベーションチャレンジ https://innovation-challenge.biz/