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横田英史の読書コーナー

パレスチナ実験場〜世界に輸出されるイスラエルの占領技術〜

アントニー・ローウェンスティン、河野純治・訳、岩波書店

2026.8.31  10:36 am

 軍・官・民を挙げて兵器や監視・盗聴システムの輸出に注力するイスラエルの実像を、ユダヤ系オーストリア人のジャーナリストが追ったノンフィクション。現地取材と当事者へのインタビュー、機密文書に基づき、イスラエルの軍需ビジネスと世界各国との関係を暴き、「血なまぐさい所には常にイスラエルの影がある」と断じる。本書を読むと、「ガザ攻撃などイスラエルの暴挙に対し、なぜ国際社会がこれほどまでに無力なのか」という疑問への答えが見えてくる。現代の世界情勢を理解するうえで知っておくべき情報が詰まった、お薦めの1冊である。
      
 イスラエルは、パレスチナの占領地域を兵器や監視・盗聴技術の実験場として利用し、海外への売り込みに生かす。対象はミサイルやロケット、防空システム、ドローンなどのハードウェアから、スパイウェア(携帯電話ハッキングツール)「ペガサス」などの監視技術までと幅広い。これらをグローバルサウスや中東の独裁国家・専制国家に輸出し、世界の紛争や弾圧に加担してきた。さらには米国やEU、南アフリカ、インド、中国などとイスラエルとの関係にも言及する。EUや米国は、難民や移民を排除するためにイスラエルの国境管理システムを利用している実態を明らかにする。
      
 兵器だけではなく「実戦で培った運用ノウハウ」を提供するイスラエルは、国際政治で独自の地位を築いた。各国にとってイスラエルが「なくてはならない存在」となった結果、国際舞台でイスラエル寄りのスタンスをとり、その暴挙に対しても沈黙することになる。また筆者が日本に向ける目は厳しい。イスラエルとそれを支える米国への非難において、日本は恥ずべきほど弱腰だと手厳しい。

書籍情報

パレスチナ実験場〜世界に輸出されるイスラエルの占領技術〜

アントニー・ローウェンスティン、河野純治・訳、岩波書店、p.366、¥3960

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。