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横田英史の読書コーナー

超知能AIをつくれば人類は絶滅する

エリーザー・ユドコウスキー、ネイト・ソアレス、櫻井祐子・訳、早川書房

2026.7.14  5:24 pm

 人間を遥かに超える知能を備える超知能AI(ASI:Artificial Superintelligence)の誕生は何としても食い止めなければならない――そう切々と訴える書。AI安全性研究の先駆者である筆者は、ASIがあらゆる手段を講じて人類を滅亡に追い込む未来予想図を描き出す。ASIが一度生まれたら人類は終わりであり、二度目はなく、やり直しは効かない。そして現在、人類は滅亡に向かう瀬戸際に立っており、AIを人間の意図や利益に沿わせるAIアライメントの確立や厳格な監視・管理体制の構築が急務であるというのが、筆者の主張である。
       
 筆者は本書で、ASIがウイルスをばら撒き人類を危機に陥れる小説仕立ての章を挟みつつ、多角的な視点からAI脅威論を展開する。ここまで危機感を募らせる必要があるのかと疑問を感じるところもあるが、ブラックボックス化しており、「可制御」でも「可観測」でもない現在AIははらむ危険性は十分に理解できる。世界中でAI開発競争に拍車かかっている現在、読んでおきたい1冊である。
        
 筆者によれば、現在主流となっているAI開発手法は、世界をより良くするAIを作るアプローチとしては適切ではない。技術進歩がもたらす右肩上がりの「技術的甘美」や功名心が技術者・研究者を開発競争に駆り立て、安全性を軽視して開発に猛進するAI企業を生む。そして、そうした安全性を軽視して突進するAI企業が世界に1社でもあるだけで、破滅的な事態を招きかねない。
       
 筆者はASI誕生を阻止する具体的(?)な仕組みを提示している。AIの開発に利用可能なすべての計算リソースを、協定署名国で構成する監視団が一元管理し、ASI開発に転用されないように万全の措置を講じるというもの。違反するデータセンターへの空爆も厭わないとする。何とも物騒な提言だが、勝者総取りの論理やジャングルの掟で動く現在の経済・世界情勢を考えると、その実現可能性は低いと言わざるを得ない。現実的な詰めの甘さは、少し残念に感じられる。

書籍情報

超知能AIをつくれば人類は絶滅する

エリーザー・ユドコウスキー、ネイト・ソアレス、櫻井祐子・訳、早川書房、p.288、¥2640

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。