横田英史の読書コーナー
半導体〜尖端覇権の興亡〜
大鹿靖明、講談社
2026.6.15 5:16 pm
半導体や液晶、太陽電池でかつて世界をリードした国内エレクトロニクス産業の栄光と没落、そして経済安全保障の観点から国として力を入れ始めた半導体産業に焦点を当てたノンフィクション。事実関係だけではなく、経営者や官僚、政治家、アカデミックなどの舞台裏の動きを丹念な取材で裏付ける。本書は大きく2部構成をとる。前半部では、太陽電池、半導体製造装置(EUV)、メモリー(エルピーダメモリ)、産業革新機構、ソニーとシャープをテーマに、2010年以降における日本の先端産業の凋落を扱う。後半部は、経済安全保障の観点から重要性が増す半導体を中心にストーリーを展開する。TSMCやラピダスを巡る数々の動きなどホットな話題を取り上げており読ませる内容だ。特にラピダスには3章を割く力の入れようである。
筆者は国内エレクトロニクス産業が凋落した元凶として、企業経営者、官僚、政治家、ジャーナリズムに厳しい目を向ける。彼ら彼女らは、自社や自国に強みのある先端技術を覇権的な道具に使うという発想に乏しい。自分たちに優位性のある技術なのに大切にしない。大局的、戦略的視点に立てない。例えば経営者はあまりにも脇が甘く、あまりにお人好しに過ぎる。他社を横目で見ながら付和雷同的に技術や工場、製造装置を二束三文で中国や韓国に売り払ってしまった。その結果、ノウハウをやすやすと手に入れた韓国や中国の台頭を許したと分析する。
経済産業省については、短期集中突破で持続性がないと辛辣な評価を下す。それが政策の持続性のなさに表れている。経営の実務を知らない官僚の集まりに過ぎず、「お絵かき」は得意でも、画餅に終わってしまうと語る。ラピダスについては、巨額の資金が投入されているさまを、「航空母艦が必要な時代に戦艦大和を建造する」ように見えると、悲観的な見方を隠そうとはしない。「日の丸」プロジェクトは、見込みのない技術の開発でも、いったん決定した方針を機動的に変更することが難しいとも指摘する。
500ページを超える大著だが、クリアな文体なのですいすい読み進むことができる。筆者はジャーナリスティックな視点で定評のあった朝日新聞の元記者だが、独立後の第一弾である本書は期待を裏切らない出来である。取材をベースにした内容は骨太で、歯に衣着せぬ人物評と皮肉たっぷりの書き口と相まって、掛け値なしに面白い。お薦めの1冊である。
書籍情報
半導体〜尖端覇権の興亡〜
大鹿靖明、講談社、p.520、¥2750

















