Electronics Information Service

組込みシステム技術者向け
オンライン・マガジン

MENU

横田英史の読書コーナー

日本社会と外国人〜入管政策が照らす80年〜

朴沙羅、中公新書

2026.6.24  5:19 pm

 日本の出入国管理政策の歴史と現状、そして法制度の内容と実施プロセスを紹介した書。日本政府と社会が外国人をどのように処遇してきたか、日本国民と外国人を分ける「境界線」の変遷を明らかにする。日本の入管政策が抱える矛盾と問題点について知ることができると同時に、「多文化共生」のお題目が虚しいことがよく分かる。朝鮮や台湾といった旧植民地の出身者から、敗戦時に一律に日本国籍を剝奪したことなど、本書で初めて知った事実も少なくない。断片的な知識だけでは把握しきれない全体像を描いており読み応えがある。
       
 日本の外国人政策は、その出発点から、外国人が自由に日本で永住することを前提としたものではなかった。外国人とは日本社会の一員と言うより、外国と結びついた潜在的脅威であり「管理の対象」として扱われた。政府は移民という言葉を避け、外国人の長期定住を認めないまま、30年以上にわたりバックドア(裏口)やサイドドア的な手法で外国人を受け入れ続けてきたと、筆者は強調する。そのため、日本に移住する人たちに対する定住や社会統合の支援は国家レベルではほとんど整備されていないのが現状だ。
       
 ちなみに日本の移民政策は中欧諸国やアジア各国(中国やインド、インドネシアなど)と比べれば進んでいるが、OECD諸国全体からは大きく後れを取っているという。例えば韓国と比較すると、労働市場や教育、政治参加、差別禁止に関するスコアが劣後しているという。

書籍情報

日本社会と外国人〜入管政策が照らす80年〜

朴沙羅、中公新書、p.312、¥1320

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。