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横田英史の読書コーナー

テクノロジカル・リパブリック〜国家、軍事力、テクノロジーの未来〜

アレクサンダー・C・カープ、ニコラス・W・ザミスカ、 村井章子・訳、日経BP 日本経済新聞出版

2026.6.18  5:17 pm

 米パランティア・テクノロジーズ(Palantir Technologies)の共同創業者と幹部が、イノベーションと「テクノロジカル・リパブリック(科学技術立国)」の在り方を論じた書。中露の脅威を想定しつつ、テクノロジーやイノベーションは国家や軍事に貢献すべきだという持論を展開する。ちなみにパランティアは、米国と同盟国の国防・情報機関に情報解析やAIベースのソフトウェアを提供する企業である。2026年3月には共同創業者のピーター・ティールが高市早苗首相と面会するなど、日本政府への売り込みをかけていることでも知られる。
      
 テクノロジーは社会を変革し、国家を変え、人類を前進させるために使うべき――。これが本書の主張だ。自由な民主社会が勝利を収めるためには、倫理的あるいは人道的な正しさに訴えるだけではなく「ハードパワー」が必要であり、その源泉は「ソフト」から生じる、というのが筆者らの見立てである。しかし、現在のテクノロジー企業やシリコンバレーは金儲けと消費者向けプロダクトに注力しすぎだと批判する。10年後には消え去るようなイノベーションに、大量の資金と頭脳を投じていることに疑問を呈している。
       
 金儲け以外のことをあえてやろうとする人は、浅薄で狭量な攻撃を受ける。社会があまりに不寛容になった結果、残されたのは「無能で中身のない人間だらけになってしまった」と嘆く。教育者、政治家、経営者が数世代にわたり、権利の主張には熱心でも善悪や徳について真剣に議論してこなかった。その結果、倫理の空白地帯が生まれ、右派・左派を問わず扇動家が入り込む余地ができてしまったという。テクノロジー企業は政府との関係を再構築し、国防と国家理念の立案に積極的に関与する義務があると強調する。
       
 保守色やナショナリズムが強く出ているため好き嫌いはハッキリ分かれるかもしれないが、米国の保守層の考え方を知るうえで読んで損はない一冊である。

書籍情報

テクノロジカル・リパブリック〜国家、軍事力、テクノロジーの未来〜

アレクサンダー・C・カープ、ニコラス・W・ザミスカ、 村井章子・訳、日経BP 日本経済新聞出版、p.360、¥3300

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。