横田英史の読書コーナー
世界政治1〜民主化と権威主義化〜
岩崎正洋 (編集),、松尾秀哉 (編集)、ちくま新書
2026.6.7 5:14 pm
世界各国を比較し、政治に関する共通点や相違点、普遍性を見出す「比較政治学」の手法を用いて世界の政治状況を分析した書。5巻シリーズの第1弾となる本書は、民主主義の後退と権威主義の台頭について論じる。米国やロシア、中国、韓国といったお馴染みの国々だけではなく、タイやカンボジア、インドネシア、エクアドル、南アフリカ、アラビア半島といった、情報の少ない国々・地域をカバーしているところに本書の価値がある。簡にして要を得た政治学の入門書でお薦めである。
先進民主主義国では反移民、反エリート支配、反国際機関、反既存メディア、反リベラルに根ざすポピュリズムが広がる。民主的よりも権威主義的な政治手法での問題解決を求める志向が若い世代を中心に幅を利かせている。一方、非民主的な国家では法による支配が市民の権利保障ではなく、体制維持の道具として使われる。恐怖の独裁者から操作の独裁者にカモフラージュし、法律や行政手段を巧妙に盾にすることで反対勢力を取り締まる。言論の統制、指導者の独裁化、選挙の不正操作、野党の弾圧、NGOの規制強化が加速している状態だ。
冒頭では衰退著しい米国の民主主義を取り上げる。単純小選挙区制や勝者総取り制による代表制の歪みが、民意を代表しない共和党の過大代表を生み出す。共和党に民主主義を支える規範を壊す動機と機会を与えてしまい、諸悪の根源となっているという。このほか、タイには21世紀の民主主義の希望を、首相だけではなく主要閣僚も一斉に世襲するカンボジアには権威主義の行き着く先を見出す。民主制の後退からの脱却したエクアドル、ネルソン・マンデラ氏を生んだアフリカ民族会議が衰退した南アフリカなど、興味深い話が並ぶ。
書籍情報
世界政治1〜民主化と権威主義化〜
岩崎正洋 (編集),、松尾秀哉 (編集)、ちくま新書、p.272、¥1056

















