横田英史の読書コーナー
明六社〜森有礼、西周、福澤諭吉らが集った知的結社〜
河野有理、中公新書
2026.6.4 5:13 pm
森有礼や西周、福澤諭吉などが結集し、明治6年に結成された言論人の結社「明六社」を取り上げた書。機関誌「明六雑誌」で繰り広げた、議会をはじめとした国のあり方、外交、夫婦(男女)のあり方、宗教への向き合い方など多岐にわたる議論を、二人の言論人をペアにして比較しながら分析していく。明治時代という激動の転換期における論壇の熱量を感じさせる書である。
興味深いのは、紹介される言論人の多彩なバックグランドである。身分や学識、明治維新との関わりの差、洋行の有無、年齢差など、彼らは実にバラエティに富んでいる。著者が最初に取り上げるのは森有礼と西村茂樹。夫婦(妻と妾)に関する両者の主張を突き合わせ、森の私生活にまで踏み込んで分析を展開する。存続すべきは「イエ」なのか、それとも「血」なのかという森の主張は、現在の天皇家存続の議論にまで及ぶという著者の見立ては示唆に富む。
さらに本書は、国のかたちに関する西周と津田真道の議論、宗教をめぐる加藤弘之と中村正直の議論、演説や翻訳についての福澤諭吉と阪谷素の議論について紹介する。福澤が暗殺への恐怖を抱いていた事実は寡聞にして知らなかった。恥ずかしながら本書で取り上げられている西村茂樹、津田真道、加藤弘之、中村正直、阪谷素といった面々については、私の管見の限りでは十分に捉えきれていなかった。それにしても、明治時代は面白い。
書籍情報
明六社〜森有礼、西周、福澤諭吉らが集った知的結社〜
河野有理、中公新書、p.288、¥1155

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)
1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。
*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。
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