横田英史の読書コーナー
いまどうするか日本経済
脇田成、ちくま新書
2026.5.19 5:10 pm
バブル崩壊やアベノミクス、異次元緩和などを踏まえて日本経済の状況を分析し、何が問題か、何を見過ごし、なぜ失敗したのか、これからどうすべきかを論じた書。1997年の金融危機以降、日本の経済政策は家計軽視と企業重視に突き進み間違い続けてきた。「生産性が上がらないから賃金は上げられない」「少子化対策は無駄で、一人当たりの生産性があがれば良い」といった政権にとって都合の良い政策を続けた結果、日本は国家の継続性に疑義を呈さなければならない状況に追い詰められていると断じる。
経済学者は日本経済の分析という職責を果たしていない。日本の実情と合っていない海外直輸入の直訳経済学に毒され、日本の真の姿を見ようとしない。経済マスコミは大本営発表を繰り返しているだけだと槍玉に挙げる。国民を貧困化させた「賃金と物価の好循環」を盲目的に支援し続けた。日本経済新聞に至っては、「賃金と物価の好循環」という嘘っぱちを20回も社説にとりあげて礼賛した。政府のプロパンダ機関に成り下がったと手厳しい。
当然だが政治家に向ける目は厳しい。政治家は経済についての理解が不十分で、政治主導の打開策は悪い方向に行きがちである。人事を左右される官僚は政治家の顔色を窺いがちで、まともは判断を下せない。何とも八方塞がりである。筆者は諸悪の根源を実質賃金の停滞に見る。企業は剰余金を海外投資したが、その利益は海外流出し続けた。その利益が家計に還元することが不可欠だと結論づける。
書籍情報
いまどうするか日本経済
脇田成、ちくま新書、p.320、¥1155

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)
1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。
*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。
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