横田英史の読書コーナー
「イスラエル人」の世界観
大治朋子、毎日新聞出版
2026.5.13 5:09 pm
イスラエルはなぜガザのパレスチナ人に対する非道な蛮行を執拗に続けるのか。イスラエルの暴挙を制止することに米国や西欧諸国はなぜ及び腰なのか。自国の政府が民族浄化を企てているような状況に、なぜイスラエル人は平気なのか。常に戦争状態にあるイスラエル社会はどのような状況にあるのか。こうした疑問に、イスラエル特派員や研究者、ボランティアとしてイスラエル・パレスチナ地域に6年半暮らした筆者が回答した書。イスラエルの政治、社会、文化、教育、風習、軍隊、歴史などを踏まえて解き明かす。
興味深いのはイスラエルの教育事情など社会的な切り口である。例えば、学校教育で平和教育を打ち切り、公用語からもアラビア語を外した。平和教育を受けたことなく「和平など無理」と意識づけられた世代がイスラエル社会の中核を担い、極右政権を支えている。不快な真実を国民に知らせないなど、政権のプロパガンダ機関に成り下がったメディアの責任も重い。
欧米の態度については、イスラム圏の憎悪に囲まれたイスラエルを「自国の利益にかなう不沈空母」と見なしていると分析する。さらにイスラエルは世界最大級の武器輸出国であり、武器輸入国でもある。武器やハイテク技術の売買で利益を共有する互恵関係にある国際社会は、イスラエルの長期化する攻撃を抑止できないと断じる。全般にリベラル寄りのスタンスが強く出ており気にところもあるが、日本メディアの報道では窺いしれないイスラエルを巡る動きを整理するのに役立つ。
書籍情報
「イスラエル人」の世界観
大治朋子、毎日新聞出版、p.320、¥1980

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)
1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。
*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。
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