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横田英史の読書コーナー

ナショナリズムとは何か〜帰属、愛国、排外主義の正体〜

中井遼、中公新書

2026.4.21  5:02 pm

 右派ポピュリズムの原動力の一つともなっている「ナショナリズム」が、いつ生まれ、どのように社会に浸透し、どのように人々の心と政治を動かすのかを論じた書。ナショナリズムは、帰属意識、愛国心、優越感情・排外意識という3つの顔をもっており、これが同胞愛を外国人憎悪に変え、暴力・民族紛争の火種になっていく。筆者は、そのメカニズムを論じるとともに、ナショナリズムが持つ政治・経済や暴力・紛争への効果についても言及する。
      
 英国のEU離脱、アメリカ第一主義を掲げるトランプ大統領の誕生、欧州での反移民政党の台頭、ロシアのウクライナ侵攻など、ナショナリズムが前面に出た動きに事欠かない。本書は事例に基づいて、「ナショナリズムとは何か」「ナショナリズムを構成しているもの」「何が帰属意識を強めるのか」「何が愛国心とプライドを強めるのか」「何が排外意識と優越感情を強めるのか」などを論じる。世界の政治情勢を理解するのに役立つ。
      
 例えば帰属意識は、鉄道網の発達にともない高まり、それを学校教育と軍隊が後押しすることによって強化される。スポーツの影響力も小さくない。愛国心は、有権者の目を経済問題からそらすために利用される。経済格差の大きい政府ほど愛国心やプライドを刺激する政策や宣伝に力を注ぐ。歌うことなど、文化的なシンボルによっても鼓舞される。
      
 このほか紛争についての議論は興味深い。民族的多様性が経済的格差や政治権力の格差と結びつくと、紛争の原因となりやすい。特に敵対国から支援を受けた少数民族・非中核民族が民族浄化の対象となる可能性が最も高いという。

書籍情報

ナショナリズムとは何か〜帰属、愛国、排外主義の正体〜

中井遼、中公新書、p.304、¥1210

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。