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横田英史の読書コーナー

不安の世代〜スマホ・SNSが子どもと若者の心を蝕む理由〜

ジョナサン・ハイト、西川由紀子・訳、草思社

2026.3.27  4:54 pm

 ニューヨーク大学教授の社会心理学者が、スマホとSNSが子どもたちに与える悪影響についてデータに基づき鐘を鳴らした書。同時に解決策も提示した書。スマホとSNSが社会性の欠如や睡眠不足、注意の断片化、依存といった状況を生み、10代の不安やうつ病、自殺、自傷といった問題につながったと主張する。InstagramとYouTubeの頻繁な通知機能や無限スクロールといったアルゴリズムが、中毒性高く設計されているとして米Mataと米Googleが敗訴しており、時宜を得た書である。この書評を執筆している時点で、米ニューヨーク・タイムズ紙のベストセラー欄に100週を超えてランクインしている。
     
 興味深いのは男子と女子への影響に明確な差があるところ。女子はSNSの女の子の写真をシュート動画と自分と比べて自己評価が低下しがちになる。不安で憂鬱になり、自傷行為や自殺の上昇率が高くなる傾向にある。一方の男子は、オンラインゲームとポルノに夢中になり、現実社会での経験が減少してしまう。いつまでも自分に自信が持てず、無力感に苦しんでしまうという。
     
 こうした子どもたちの傾向を、筆者は「子ども時代の大いなる組み替え」と名づける。すなわち遊び中心の子ども時代から、スマホ中心の子ども時代への転換である。1990年以降生まれの子どもは、現実世界での過保護(自由に遊ばせない)と仮想世界での保護不足に直面したと語る。契機となったのは、iPhoneの登場(2007年)と、自撮り用インカメラ装備のiPhone4(2010年)の登場である。これらが子どもたちに重大な影響を及ぼした。
 スマホとSNSは、自由遊びや同調性を子どもから奪い、友人との集まりよりも非同期な交流を膨大な時間を費やすように仕向けた。人類には身体性が重要なのに、スマホ中心の生活は身体を使うことの大切さや体験の重要さを忘れさせた。オンラインが若者から通過儀礼を奪ったと断じる。
     
 筆者は以上の問題に対していくつかの対策を提示する。例えば、学校でのスマホ禁止、高校生までスマホを与えない、16歳までSNSのアカウントの作成禁止、自由遊びの拡充、育児放棄に関する法律をより限定的なものにする(子どもが一人でいるだけで訴えられないようにする)といった具合である。

書籍情報

不安の世代〜スマホ・SNSが子どもと若者の心を蝕む理由〜

ジョナサン・ハイト、西川由紀子・訳、草思社、p.480ページ、¥3080

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。