横田英史の読書コーナー
国のために死ねるか~自衛隊「特殊部隊」創設者の思想と行動~
伊藤祐靖、文春新書
2016.11.26 10:18 am
自衛隊の特殊部隊を立ち上げた著者が、中野学校出身の父親との関係や自衛隊時代、自衛隊退職後にフィリピンのミンダナオ島での実戦体験などを通して培った軍隊哲学を語った書。ストイックでエキセントリックな話が多く好き嫌いが分かれそうだが、こんな生き方があるのだと知るのも悪くない。ちなみに特殊部隊とは、敵陣に入り込み、孤立無援の状態でも、通信や医療行為を自らこなし、自己完結して作戦行動をとることのできる部隊を指す。パラシュート降下やレンジャー行動、スキューバ潜水などにも習熟している必要があるという。
本書はまず、海上自衛隊内に特殊部隊を創設するきっかけになった、1999年に起きた能登半島沖の不審船事件を紹介する。北朝鮮の工作母船とイージス艦との間で生じた緊迫した状況を詳細に活写する。現場にいた者だけがわかる緊張感にあふれている。国防の最前線の一端を知ることができる貴重な証言である。
興味深いのは、平和慣れした自衛隊に筆者が感じた違和感や、海上自衛隊と陸上自衛隊の文化の違いなど自衛隊の実態の数々である。戦闘行動に関する知識や体験を得たミンダナオ島での話も凄まじい。へ~っと思うような逸話が次から次へと登場する。
書籍情報
国のために死ねるか~自衛隊「特殊部隊」創設者の思想と行動~
伊藤祐靖、文春新書、p.256、¥842

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)
1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。
*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。
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