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横田英史の読書コーナー

人工知能~人類最悪にして最後の発明~

ジェイムズ・バラット、水谷淳、ダイヤモンド社

2015.8.1  10:38 am

 数多くの識者への取材と、研究や応用の最新動向を踏まえ人工知能の危険性に警鐘を鳴らした書。人工知能が進歩を続けると2045年ころには技術的変曲点「シンギュラリティー」を迎え、人間の制止が利かなくなると主張する。そのリスクを400ページあまりにわたって説き続けているのは、ある意味で立派である。さすがに取材先が偏っている点は気になるが、本書が貴重な情報を伝えているのも確か。今後の技術の在り方について考えたい方に向く。
 人工知能のリスクについては、「コンピュータが世界を乗っ取る危険は、すでに現実のものだ」と発言するスティーブン・ホーキングのほか、ビル・ジョイ、イーロン・マスク、ビル・ゲイツといった面々が懸念を表明している。いまや一つの流れを形成しているともいえる。筆者は、人工知能のリスクが予測不可能で計算できないことや、Googleなど隠れて人工知能を研究するスティルス企業の存在などを問題視する。ちなみに筆者はフリーのテレビ・プロデューサーで、タイム誌が選んだ「AIによって人類滅亡を論じる重要な識者5人」の一人である。

書籍情報

人工知能~人類最悪にして最後の発明~

ジェイムズ・バラット、水谷淳、ダイヤモンド社 、p.408、¥2160

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。