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横田英史の読書コーナー

マーケティングの嘘:団塊シニアと子育てママの真実

辻中俊樹、櫻井光行、新潮新書

2015.4.13  1:12 pm

 巷に流れる“見てきたような嘘”に対して、消費者の生活パターンをミクロにとらえる「生活日記調査」の結果にもとづき異論を唱えた書。思い込みだけで流されるステレオタイプの言説の危うさがよく分かる。帯にある「偽物の消費者像に騙されるな」という主張も納得できる。読み終わると、一知半解の蒙を啓かれた気分になる。消費者のナマの姿の一端を知ることができる書なので、マーケティングに興味のある方にお薦めしたい。
 市場調査で一般的に使われる定量的マーケティングは、しばしば偽物の消費者イメージを作り出すという。「若い母親の料理は手抜きだらけ」「シニア層の散歩は健康目的」といった定説である。ところがイメージが独り歩きしただけで、実態とは大きな乖離があるというのが著者の主張。日記形式で日々の行動を詳細に記入してもらう生活日記調査だと、リアルな消費者の姿を浮かび上がらせることができるという。例えば、和食の伝統を守っているのは実は子育てママであり、時短メニューの代表例が和風の煮物ということが判明する。子育てママにとっては、包丁よりもクックパッドが重要という指摘も面白い。シニアの生活実態についての解説は、その年代にそろそろ差し掛かる評者にとって興味深かった。

書籍情報

マーケティングの嘘:団塊シニアと子育てママの真実

辻中俊樹、櫻井光行、新潮新書、p.190、¥756

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。