横田英史の読書コーナー
迫りくる「息子介護」の時代:28人の現場から
平山亮、光文社新書
2014.6.10 2:15 pm
嫁でも娘でも妻でも夫でもなく、息子が親の介護をする「息子介護」を社会心理学者が心理的な側面から解説した書。筆者は28人の息子介護者へのヒアリングをもとに、微妙な“男心”と男だからこそのメリットと困難さを明らかにする。介護の書というと厳しい実態を表面的に扱うケースが少なくないが、男性の心理面をフィーチャーしたところがユニークだし役立ち感がある。評者から見ても「あるある」と思わせる指摘が少なくない。いつか来る時に備えて、いろいろな気づきを与えてくれる1冊である。
本書は息子介護を多面的にとらえる。まず統計データを活用して現状を明らかにする。少子高齢化のなか、嫁に頼ろうとしても、妻も自らの親を介護しなければならない。そもそも非婚化で妻をもたない息子があふれている。肉親と言っても、男ゴコロの心理が兄弟や姉妹との関係が複雑にする。兄弟や姉妹との感情的な葛藤が浮き彫りにされていて読み応えがある。まさに四面楚歌、問題山積である。筆者は家族外のネットワークについても論じる。職場との間合い、友人との関係、地域のネットワークとの関わりなど示唆に富む指摘が多い。
書籍情報
迫りくる「息子介護」の時代:28人の現場から
平山亮、光文社新書、p.318、¥950
横田 英史 (yokota@et-lab.biz)
1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。
*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。
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