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横田英史の読書コーナー

内向型人間の時代~社会を変える静かな人の力~

スーザン・ケイン著、古草秀子・訳、講談社

2013.6.26  12:00 am

 ビジネスパーソンとしては損な性格と思われる内向型。筆者は、この俗説を事例や最新の知見に基づき覆す。内向型だからといって成功するわけではないが、ビジネスに成功するための資質として優れた面が少ないことを説得力をもって論じる。ここでいう内向型人間とは、喋るよりも他人の話を聞き、パーティで騒ぐよりも一人で読書をし、自分を誇示するよりも研究することを好む人間を指す。本書では、ビル・ゲイツやガンジー、アインシュタイン、ラリー・ペイジ、バフェット、ゴアなどを内向型人間として挙げる。
 筆者は、誰からも好かれる人が理想像になり、カリスマ的なリーダーシップという神話が生まれた経緯を明らかにする。神話が流布して、外向型人間が“成功”に結びつき、内向型人間が“失敗”につながるというハーバード・ビジネススクール的な価値観が世の中を席巻してしまった。しかし筆者は、カリスマ的だとみなされている人物は、そうでない人物と比べて給料は多いが経営手腕は優れていないという調査結果を披露し、神話を否定する。
 ちなみに米国は一般的に外向型人間の国家だと思われているし、米国人(特にビジネスパーソン)はそうした期待を背負わされている。しかし米国人の3分の1から2分の1は内向型だという。一方で外向型が重視される米国では内向型の存在感は大きくない。出世競争でも不利になる。本書は、内向型が直面する問題を明らかにすると同時に、創造性に飛んだ人間は内向的という調査結果などをもとに、内向型のメリットを明らかにする。

書籍情報

内向型人間の時代~社会を変える静かな人の力~
スーザン・ケイン著、古草秀子・訳、講談社、p.360、¥1,890

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。