横田英史の読書コーナー
不死身の特攻兵~軍神はなぜ上官に反抗したか~
鴻上 尚史、講談社現代新書
2018.2.19 10:17 am
特攻を9回も命じられながら全てで生還を果たした、特攻兵・佐々木友次の人生を追った書。「死ね」と命じる上官の命令に反して、どうやって生き延びたのかについて、筆者は佐々木(2016年2月に死去)自身へのインタビューや当時の状況を交えながら探る。もっとも筆者の狙いは、特攻というシステムを生んだ日本の組織や社会の今も残る病理にあることが読み進むと分かってくる。著者は劇作家・演出家の鴻上尚史。同じ題材を扱った小説「青空に飛ぶ」も上梓している。
鴻上は、特攻という題材を借りながら、「命を粗末にする」「道理が通らない」日本組織の今も変わらぬ病理を明らかにする。陸軍特攻の第1回に選ばれるほどの技能をもつ佐々木は、体当りせずに爆弾を命中させたほうが日本軍の戦果になると主張。実際、初回の特攻では戦艦を撃沈しながらも生還を果たした。しかし陸軍は体当たりして死んだと誤認して天皇に報告を上げる。佐々木の生還に慌てた上官は、体面を保つために体当たりを繰り返し命じる。戦果よりも部下を死なせることに狂奔するさまは滑稽である。
このほか「命じる側」の視点から美化して語られることの多い特攻について、「命じられる側」の実情を明らかにしたところも本書の読みどころの一つである。実に勉強になる。あの時代を“正しく”知る上で格好の書といえる。
書籍情報
不死身の特攻兵~軍神はなぜ上官に反抗したか~
鴻上 尚史、講談社現代新書、p.296、¥950

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)
1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。
*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。
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