横田英史の読書コーナー
人工知能が変える仕事の未来
野村直之、日本経済新聞出版社
2017.2.28 9:49 am
ディープラーニングの進展で生まれた第3次AIブームが、ビジネスや産業、働き方、社会、製品、サービスにもたらすインパクトを探った書。著者は、NEC C&C研やジャストシステムを経て、人工知能(AI)関連のベンチャー企業を立ち上げた研究者。500ページ弱と分厚いが、平易な文章なのでスイスイ読める。
筆者はAIを、強いAIと弱いAIに分けて考える。前者は人間の脳を模して、人間と同じ仕組みと原理に基づくことを目指すAIである。ハードルは高い。後者は、人間の能力を補完することを主眼に置く。実用志向AIである。さらに筆者はAIの歴史を簡単に振り返るとともに、応用分野の変遷に焦点を当てる。
筆者は今回の第3次AIブームは“本物”で普及すると断じる。その一方で、このところ盛んに取り上げられているシンギュラリティ論(人間の想定を超えてAIが勝手に進化を始める特異点があるとする議論)に疑問を呈する。行き過ぎた楽観論や「なんちゃってAI」がはびこるに現状に警鐘を鳴らす。
本書を執筆した理由をこう記す。「今回のAIブームがバブルとなり、弾けて、前回と同様、産業応用が頓挫することを恐れた」と。30年にわたって毀誉褒貶の激しいAIを間近に見てきた著者の議論は説得力十分である。本書のカバー範囲は広くAIについてざっと知るのに向く。
書籍情報
人工知能が変える仕事の未来
野村直之、日本経済新聞出版社、p.488、¥2376

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)
1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。
*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。
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