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ザイリンクスとSpline.AI、AWS上で動作するX線画像分類用深層学習モデルとリファレンスデザインを開発

2020.11.12  4:02 pm

適応性の高いモデルにより、医療機器メーカーおよび医療サービス プロバイダーは臨床放射線アプリケーション用トレーニング済みモデルの迅速な開発が可能に

ザイリンクス社 (カリフォルニア州サンノゼ)は10月13日(米国時間)、Spline.AIとの協業を経て、Amazon Web Services(AWS)上で動作する完全な機能を備えた医療X線画像分類用深層学習モデルとリファレンスデザインキット(*1)を発表した。この高性能なモデルは、ZCU104をベースとするザイリンクスZynq® UltraScale+™ MPSoCデバイス上で運用され、ザイリンクスDPU(深層学習プロセッシングユニット)を利用する。このDPUはソフトIPテンソルアクセラレータであり、疾患の分類や検出などを目的とする各種ニューラルネットワークの運用に十分に対応できる性能を備えている。
*1) https://devices.amazonaws.com/detail/a3G0h0000087vZwEAI/Xilinx-Zynq-UltraScale+-Healthcare-AI-Starter-Kit
  
両社の協業で開発されたこのソリューションは、ザイリンクスZynq UltraScale+ MPSoCデバイスとPythonプログラミングプラットフォームで動作するオープンソースモデルを使用しており、研究者はこのモデルをアプリケーション固有の多様な要件に適応させることができる。医療機器メーカーおよび医療サービスプロバイダーは、このオープンソースデザインを使用して、各種の臨床放射線アプリケーション向けトレーニング済みモデルを迅速に開発、運用できる。これらのアプリケーションはモバイル、携帯型、またはPOC(Point-of-Care)エッジデバイスで利用でき、クラウドで簡単に拡張できる。
  
このオープンソースデザインを使用した放射線検査フローの開発手法の詳細は、https://japan.xilinx.com/applications/medical/healthcare-ai.htmlを参照されたい。
  
ザイリンクスのコアマーケットグループのマーケティングおよびビジネス開発担当バイスプレジデントであるカピル・シャンカー(Kapil Shankar)は、次のように述べている。
「AIは医療アプリケーションの中でも急速な成長と需要の伸びが著しい分野です。ザイリンクスは適応性の高いオープンソースソリューションを医療業界と共有できることを楽しみにしています。この費用対効果に優れたソリューションは、レイテンシの短縮、電力効率の向上、スケーラビリティの強化を実現します。加えて、このモデルはほかの類似の臨床診断アプリケーションに容易に適応可能であるため、医療機器メーカーおよび医療サービスプロバイダーはリファレンスデザインキットを利用して将来の臨床放射線アプリケーションを迅速に開発できます」
  
このソリューションの人工知能(AI)モデルは、Amazon SageMakerを使用してトレーニングされ、クラウドからエッジに至るまでAWS IoT Greengrassを使用して運用されるため、遠隔からの機械学習(ML)モデルのアップデート、地理的に分散した推論の実行、リモート ネットワーク間および広大な地域間でのスケーラビリティが可能となる。
  
Amazon Web ServicesのIoT担当バイスプレジデントであるダーク・ディダスカロウ(Dirk Didascalou)氏は、次のように述べている。
「臨床放射線アプリケーション用トレーニング済みモデルの迅速な開発手法を必要とする医療分野の顧客向けに、ザイリンクスが設計しているソリューションをサポートできて光栄です。Amazon SageMakerにより、ザイリンクスとSpline.AIは、低コストの医療機器での高精度な臨床診断を可能にする高品質なソリューションを開発できます。AWS IoT Greengrassを統合したソリューションにより、医師たちは物理的な医療機器を使用せずにX線画像を簡単にクラウドにアップロードできるようになり、遠く離れた地域への医療提供が可能となります」
  
Spline.AIのCTOであるシャヒド・フセイン(Syed Hussain)氏は、次のように述べている。
「ザイリンクスZynq UltraScale+ MPSoCは、今回の共同作業でトレーニングと開発に使用した新しいCOVID-XSモデルなど、臨床環境における高性能な深層学習モデルのスケーラブルな運用に最適なエッジデバイスです」
  
このソリューションは既に肺炎およびCovid-19検出システムに使用され、驚くほど高い精度と低レイテンシの推論を達成している。開発チームは、キュレーションしてラベリングした30,000枚以上の肺炎画像と500枚のCovid-19画像を使用して深層学習モデルのトレーニングを実行した。このデータは、米国国立衛生研究所(NIH)、スタンフォード大学、MITなどの医療機関および研究機関による公的研究と、世界各地の病院および診療所に提供される。