記者会見

記者会見 NO-20
TOPPERSプロジェクトが、TOPPERS/HRP2カーネルを一般公開すると発表

TOPPERSプロジェクト　高田会長

NPO法人、TOPPERSプロジェクト（会長、名古屋大学、高田広章教授）は組込み、開発環境展（ESEC）の会期中に記者会見を行い、かねてから開発を進めていた高信頼性組込みシステム向けのリアルタイムOS、TOPPERS/HRP2カーネル、およびTOPPERS新世代カーネル向けテストスイート、TOPPERS Test Suite Package(TTSP)の一般公開を開始することを発表した。

TOPPERS/HRPカーネルは、 “High Reliable system Profile”の略で、すでに開発済みの次世代リアルタイムOS、TOPPERS/ASP カーネルに高信頼組込みシステムに求められる各種の機能を追加し、さらに高い信頼性・安全性を要求される組込みシステムや、より大規模な組込みシステム向けに適用できるように拡張したもの。（下図を参照）

TOPPERプロジェクトの新世代カーネルとロードマップ

すでに開発済みのTOPPERS/HRPカーネルの最初のバージョンは、今年7月にJAXA（日本宇宙航空研究開発機構）が宇宙ステーション補給機「こうのとり」3号機を搭載して打ち上げを計画しているH-IIB ロケットの制御ユニットに使用される予定になっている。今回一般公開される、TOPPERS/HRP2 カーネルは、このTOPPERS/HRP カーネルの改良版と位置づけられる。名古屋大学大学院情報科学研究科組込みリアルタイムシステム研究室（高田研究室）と組込みシステム研究センター（NCES）を中心に開発されたHRP2 カーネルは、μITRON4.0 仕様保護機能拡張（μITRON4.0/PX 仕様）をベースに様々な改良を実現しており、TOPPERS/ASPカーネルに高信頼組込みシステムに必要となるメモリ保護機能とオブジェクトアクセス保護機能、拡張サービスコール機能、ミューテックス機能、オーバランハンドラ機能を追加し、メモリ保護機能と相性の悪いメールボックス機能を削除している。
HRP2 カーネルのメモリ保護機能の特長は、ARM Cortex-M3コアなどのマイクロプロセッサで提供されているメモリ保護機能（Memory Protection Unit）機構の細部を隠蔽して、その細部を知らなくても簡単にメモリ保護機能を活用できる点にある。ユーザは各オブジェクト・ファイル（またはセクション）を配置するメモリ領域をどのように保護するかを指定するだけで、コンフィギュレータがこれらをメモリ上にどのように配置するかを決定して、その配置下でのメモリ保護情報を静的に生成する。

コンフィギュレータの動作

HRP2 カーネルがサポートするプロセッサは、ルネサス・エレクトロニクスのSH-4および、メモリ保護機能(MPU)内蔵のSH-2A（SH72AWグループなど）、MPU内蔵のARM Cortex-M3をベースした各社のデバイス。今後、ARM 11コア、およびARM Cortex-Aコアのプロセッサに対するサポートも提供する予定である。

高田会長は、次世代の宇宙機器用の通信ネットワーク規格である、SpaceWire（スペースワイヤ）にHRP2カーネルを対応させる計画も進行中であることを明らかにした。HRP2カーネルをベースにしたSpaceWire対応のOS をJAXAとNECSが共同で開発し、その上で動作するミドルウェア群も開発する予定である。

また、TOPPERSプロジェクトは、マルチプロセッサRTOS向けのテストスイート、TOPPERS TestSuite Package(TTSP)の一般公開を開始すること、6月12日に2012年のTOPPERSカンファレンスを開催することも併せて発表した。

2012年5月　取材　EIS編集部　中村