記者会見 NO-5
2005年2月 ラティス・セミコンダクター社、LatticeXP FPGA発表記者会見

リポータ:EIS編集部 中村

プログラマブル・ロジックの主要サプライヤである、ラティス・セミコンダクター社が、SRAM FPGAとFLASHメモリ技術を混載した新製品、LatticeXPTMの発表記者会見を都内で開催した。

ECファミリを不揮発性化したXPファミリ

今回、発表されたFPGA、LatticeXPファミリは、ラティス社の新たなファンドリ・パートナである、富士通の130nm CMOS、Low-k、銅配線技術を使用して実現される。その内部構造は、昨年ラティス社が発表したSRAMベースのFPGA、LatticeECTMデバイスとコンフィギュレーション・データ保持用のFLASHメモリを同一チップ上に集積した形となっている。ラティスでは、SRAMベースのFPGA、LatticeEC/ECPとこのLatticeXPを並行して開発していたという。LatticeXPの基本的な論理セルはLatticeEC/ECPと同一のCMOS-SRAMの構造になっており、1.2Vのコア電圧で動作する。専用のDDR SDRAMインタフェースを内蔵しているのもECファミリのデバイスと同じ。ただし、XPファミリはデバイス内にコンフィギュレーション用のFLASHメモリも内蔵しているため、コンフィギュレーション・データをストアする外部メモリの接続が不要になり、FPGA自体が外部から見れば不揮発性デバイスとなる。これによって、プリント基板の実装密度が改善され、電源投入後からデバイスが論理動作を開始する時間も短縮可能になる。 LatticeXPの内部論理セルとFLASHメモリの構造を下記に示す。

LatticeXPの内部構造

内蔵のFLASHメモリからコンフィギュレーション・データを読み込んで、デバイスが論理動作を開始するまでの時間は1ms。 デバッグ時にはFLASHメモリをバイパスしてsysCONFIGポートなどからSRAMセルに直接、コンフィギュレーション・データをロードすることもできる。FLASHメモリへの書き込み時間は約2秒を要する。また、デバイスが通常のロジック動作を行っているときに、FLASHメモリの内容を書き換えることもでき、次回の電源起動時から異なる論理動作をさせることが可能である。

LatticeXPファミリは、下記に示すようにLUT数で3.1K個から19.7K個までの5種類のデバイスで構成される。

LatticeXPファミリ

上記の製品のうち、XP3、XP15、XP20のLUT数/sysMEMブロック数は、LatticeECファミリのEC3、EC15、EC20と互換になっているため、ECのデザインをXPに移行させて不揮発性化することも可能のようだ(ただし、デザイン・ファイルに互換性はない)。
なお、このファミリのコア部分は1.2Vで動作するが、供給電圧は1.8V/2.5V/3.3VのI/Oに対応しているバージョンと1.2VのI/Oのみに対応する低価格バージョンの2種類が提供される。

ラティス社は富士通とCMOSの 90nm FLASHプロセスの開発を進めており、32.8K個のLUTを内蔵しているECファミリのEC33に対応したさらに高集積のXPデバイスや、DSPブロックを内蔵したLattice-ECP-DSPファミリにFLASHメモリを内蔵させた製品の開発も進めていると推定される。

ECと同じ開発環境

当然のことながら、XPファミリの設計開発環境はECファミリと同じように、同社の開発ツール、ispLEVERによってサポートされる。サード・パーティの開発ツールとしては、メンターグラフィックス社のLeonardo SpectrumやSinplicity社のSinplify合成ツール、メンターグラフィックスのModelSimシミュレータなどが使用できる。また、EC用に提供されているIPコアをXPに使用することも当然可能になる。

入手可能時期と価格

 

LatticeXPファミリのうち、XP10のサンプルはすでに入手可能になっており、このデバイスの量産は2005年2Qから開始される予定。その他のデバイスのサンプルは今年前半までに提供され、量産は今年の第3四半期から開始される予定。
256ピンfBGAパッケージのXP10の価格は1,000個購入時で32.95ドル。来年の大量注文に対しては、15ドル以下までに単価を引き下げる計画だという。

競合するのは?

このデバイスが発表される約1ヶ月前、ライバルのアクテル社もFLASHベースのFPGA、ProAISC3/Eを発表している(詳細は、こちら)。アクテル社のProASIC3/Eは論理セル自体がFLASHメモリのスイッチで実現されるのに対して、LatticeのXPファミリは上記のように論理セルがSRAMのセルで実現されており、FLASHメモリはSRAMセルに対するコンフィギュレーション・データのストアに使用されている。両者は共にFLASHメモリ技術を使用した不揮発性FPGAでありながら、基本的には異なる構造になっている。LatticeXPファミリは、アクテルのProASIC3/Eファミリと同じ不揮発性FPGAという点で競合するかもしれないが、ユーザはFLASHベースのFPGAをSRAM FPGA+外部接続FLASHメモリの構成にしたときのトータルな価格、機能、性能などの点で比較することになるだろう。しがって、LatticeXPの競争相手には、XilinxのSpartan3やAlteraのCyclone IIも含まれることになる。
また、ユーザにとっては、Lattice社のECファミリを使用すべきか、または、どの時点からXPファミリを使用するかを決定するのもちょっと悩ましい問題かもしれない。勿論、XPファミリの製品が安定供給され、ECとXPの価格差がなくなれば、当然XPを採用することになるのだが・・・

おまけ:なつかしい人

この記者会見でプレゼンテーションを行ったのは、Lattice Semiconductor社の本社副社長のSteve Donovan氏であった。実はこのDonovan氏、今から18年程前、同時あったMonolithic Memories, Inc(MMI)といいう会社の日本法人で責任者を務めていた人物だ。

 

このDonovan氏、MMI社には AMD社から移籍してきたのだったが、MMIへの移籍後間もなく、そのMMI社がAMDに買収されるという事件に遭遇した。つまり、移籍先の会社が移籍前に在籍した会社に買収されてしまい、元の会社に「出戻り」する形になったのである。
その後、同氏は1989年に再びAMDを退社して現在のLattice Semiconductorに移籍したのだが、 MMIを吸収したAMDのPLD部門はVantisという会社に分社された後に、今度はLattice社に買収、吸収されるという運命を辿っている。

Steve Donovan副社長

 

Donovan氏はこの間、これらPLD業界の栄枯衰勢、離合集散を見届けてきた人の一人である。
PLD/FPGA業界には、Donovan氏のようなMMI社出身の人が多数活躍している。現在のLattice社のCEOである、Cyrus Tsui氏も、かつてはMMI社で活躍していた一人である。

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