記者会見 NO-16
アトメル、maXTouch 大型スクリーン用タッチ・センサ・ソリューション



中堅半導体企業のアトメル社は、日本市場においても、かつてはPLD、EEPROM、FLASHメモリなど、最近ではAVRマイコンで大きな存在感を示している。 同社が、AVRマイコンと共に今もっとも力を注いでいるのが、タッチ・センサ・コントローラである。
このほど、同社のTouch Products担当のシニア・マネージャー、Binay Bajaji氏(写真左)がCOMPUTEX-TAIPEIの終了後に来日したのを機にインタビューを行った。



需要が急増するタッチ・スクリーン・センサ
Apple社のiPod、iPhone、iPadと続くヒット商品はいずれもタッチ・スクリーン形式のユーザ・インタフェースを採用しており、今後はノート型やタブレット型のPCなど、さらに大型のディスプレーに対応したタッチ・センサ・ソリューションが求められる可能性が高く、タッチ・スクリーン・センサ・コントローラに対する需要が急増することが予想される。大型スクリーン用タッチ・センサには多数の検出電極とマルチ・タッチ(複数の指での同時タッチを検出)の機能が要求され、速い応答スピード、耐ノイズ特性に優れたソリューションが求められる。特に応答スピードについては、ゲームなどのアプリケーションをスマートフォーンやタブレットPCなどで実行させた際に大きな課題になる。また、ゲーム機やPCでは、ペンや指での描画機能、いわゆるスタイラス入力のサポートも必要になり、Windows7をはじめ、Linux/Androidなどを含む主要なOSによるサポートも欠かせない。このタッチ・スクリーン・センサには幾つかの方式があり、各社の競争が展開されている。


アトメルのタッチ・センサ・ソリューション
アトメル社は、1998年からAVRマイコンをベースにしたタッチ・センサ・ソリューションを提供しており、2008年には静電容量形タッチ・センサで優れた技術を保有していた英国のQuantum Research Groupを買収し、自社のマイコン技術を組み合わせたタッチ・センサ・ソリューションの製品群を拡大させている。ここまでの同社の製品群は、いずれもシングル・タッチ、およびツー・タッチのソリューションであったが、2009年秋に、maXTouchと呼ばれる、無制限のマルチ・タッチをサポートしたタッチ・スクリーン用コントローラを発表した。maXTouch製品は「ITO(Indium Tin Oxide)投影型静電容量方式」を採用しており、2009年秋に発表されたデバイス、mXT224は10.2インチまでのスクリーン・サイズをサポートしていた。mXT224は、最近になってサムソンの最新型3D TVのコントローラに採用された模様である(詳細はこちら)。
アトメルは、2010年5月になって最大16タッチの制限はあるものの、15.6インチまでの大型スクリーン・サイズをサポートする新しいソリューションを提供すると発表した(プレスリリースの全文はこちら)。これにより、アトメル社のタッチ・センサ・ソリューションは下図のように拡張された。

大型スクリーン対応の新コントローラ
アトメルが新たに発表したソリューションは15.6インチまでのスクリーン・サイズに対応しており、スタイラス入力もサポートしているため、スマートフォーンだけでなく、モバイル・インターネット・デバイス(MID)から、電子ブック・リーダ、スマート・ブックPC、ノートPC、工業用機器などの幅広い用途への使用が可能になる。
この新しいソリューションでは、同時タッチの数を16までに制限している。通常、一人の人間が画面操作することがほとんどであると考えれば、この16タッチまでの制限は仮想キーボードのアプリケーションでも問題なく、ファミリ・ゲームやパーティ・ゲームのような複数の人間がタッチするような用途にも十分対応できるものと考えられる。
この新しいコントローラ製品の型番などはまだ発表されていないが、4個のチップをホスト・コントローラとなる1個のAVR32マイコンに接続することで、8インチから15インチまでのスクリーン・サイズをサポートし、3チップ構成の場合は5インチから10.1インチまでをサポートする。タッチ・レポート・レートは150Hz、フィンガー・ピッチ・セパレーションは9mm。意図しない手のひらでの押圧などを無視できる機能も搭載する。アトメルでは、このソリューションを使用するときのリファレンス・デザイン、ソフトウェアなどを提供する予定であり、Linux/Android OSの機器用にはI2C、Window XP/7採用機器向けにはUSBドライバも提供する計画である。
同社は、今後、15インチ・サイズまでのサポートに必要となるチップ数を削減できる新たなデバイス、またさらに大型のサイズにも対応可能なデバイスを開発するものと思われる。

アトメルのmaXTouchデモ・ボード
3個のタッチ・センサ・コントローラにAVR32のホスト・コントローラを接続している。

既存のノートPCのディスプレーを改造してデモ・ボードを接続

複数の指で同時に線を描いたときの画面

2010年6月 EIS編集部

 

バックナンバー

>> NO-1 5月17日 テンシリカ、「Xtenssa LX」

>> NO-2 6月28日 日本アルテラ、Cyclone II ファミリ発表記者会見

>> NO-3 9月10日 Xilinx Virtex-4 ジャパン・プレス・サミット

>> NO-4 2005年1月6日 ACTEL社、ProASIC3/E発表記者会見

>> NO-5 

2005年2月 ラティス・セミコンダクター社、LatticeXP
FPGA発表記者会見

>> NO-6 

日本テレロジック、アジア市場向け製品戦略/要件管理ツール新製品発表会

>> NO-7 

Lattice Semiconductor社 MachXO発表記者会見

>> NO-8 

海外半導体メーカー新春記者懇談会/新製品発表会

>> NO-9 

(株)エーアイコーポレーション、日本アルテラ(株)、NPO法人TOPPERSプロジェクト、
アルテラ、NIOS II向け機能分散型マルチプロセッサ対応の商用リアルタイムOS、「TOPPERS-Proマルチ/FDMP」共同記者発表

>> NO-10 

日本テレロジック(株)、変更管理ツール「Change」および、
構成管理ツール「Synergy」の最新バージョン発表記者会見

>> NO-11 

ニューモニクス・ジャパン合同会社 事業説明会

>> NO-12 

低消費電力の不揮発性FPGAを開発したSiliconBlue社が最初の製品ファミリを発表 日本市場にも本格参入

>> NO-13 

ルネサス テクノロジ、カーナビ用SH-4Aデュアル・コア・プロセッサ、SH7786 発表記者会見

>> NO-14 

アクテル社が、IGLOO nano /ProASIC3 nano FPGA を発表 携帯機器への搭載を狙った低価格、低消費電力製品

>> NO-15 

アクテル社、ミックスド・シグナルFPGA『SmartFusion』を発表。ARM Cortex-M3、プログラマブル・アナログ搭載の新デバイス

>> NO-16 

アトメル、maXTouch 大型スクリーン用タッチ・センサ・ソリューション