記者会見 NO-9
(株)エーアイコーポレーション、日本アルテラ(株)、NPO法人TOPPERSプロジェクト、
アルテラ、NIOS II向け機能分散型マルチプロセッサ対応の商用リアルタイムOS、「TOPPERS-Proマルチ/FDMP」共同記者発表

2007年4月17日、(株)エーアイコーポレーション日本アルテラ(株)、およびNPO法人TOPPERSプロジェクトが共同で記者会見を開き、近くエーアイコーポレーションがアルテラ社のソフトコア・プロセッサ、NIOS IIのマルチプロセッサ・システムに対応した商用のリアルOS、「TOPPERS-Proマルチ/FDMP」を6月から発売することを発表した。

機能分散型マルチコア・プロセッサ・システム対応のRTOS、「TOPPERS/FDMP」を商用化

今回発表されたリアルタイムOS(RTOS)は、TOPPERSプロジェクトが2005年4月に発表した機能分散型マルチコア・プロセッサ・システムに対応したオープン・ソースのRTOS、「TOPPERS/FDMP」をベースにしており(同時の発表資料)、これにエーアイコーポレーションが同社の取扱うTCP/IPプロトコル(EBSNet社RTNET)と電源断対応PC互換FATファイルシステム(EBS社RTFiles)の基本ミドルウェアをインテグレーションして商用製品として提供するもの。エーアイコーポレーションは、これまでもTOPPERSプロジェクトが開発したiTRON仕様準拠のオープン・ソースRTOS、「TOPPERS/FI4」にリモート・リンク・ローダ(RLL)機能を付加した商用製品、「TOPPERS-Pro」、およびメモリ保護カーネルと RLL対応を実現した「TOPPOERS-Proセキュア」を販売してきた実績を持っている。

記者発表を行ったエーアイコーポレーションの
加藤社長(左) TOPPERSプロジェクトの高田会長(中)日本アルテラの堀内ディレクタ(右)

今回、エーアイコーポレーションは、「TOPPERS-Proマルチ/FDMP」をアルテラ社から提供されているNIOS IIの統合開発環境、NIOS II IDE、および評価ボードへの対応も実現した。さらに、同社はRLL機能を利用したフィールド・アップデート機能や、無線LAN、SD/SDIOカードドライバを含む各種のミドルウェアもオプションとして提供してゆく予定である。
本製品の正式発売は6月から予定しており、正式なライセンス価格などはその時期にリリースされる予定。

オープン・ソースの「TOPPERS/FDMP」を商用化して販売する意義について、エーアイコーポレーションの加藤博之社長は「当社を通じて商用製品として購入することにより、ユーザは製品の品質保証、専任の技術者による技術サポートを受けることができ、しかもオープンソース・ソフトウェアで問題となる知的財産権侵害に関する問題にも対処可能になる」と説明した。さらに、加藤社長は、「この製品を日本国内だけでなく、海外市場でも販売したい」との意欲も示した。

一方、この記者会見に出席した日本アルテラの堀内伸郎マーケティング・ディレクタは、「32ビットのソフトコアRISCプロセッサ、NIOS IIの普及が進んでおり、NIOS IIの開発キットは、これまで20,000セット以上、出荷されている。最近はNIOS IIをFPGA上に複数個実装してシステムの性能を向上させる設計事例が増加しており、マルチコアに対応したRTOSのサポートが課題になっていたが、今回のTOPPERS-Proマルチ/FDMPのサポートによって、機能分散型マルチコア・プロセッサの利点を活用したシステム性能の向上が容易になり、低周波数動作/低消費電力化も実現できる。また、機能分散型マルチプロセッサ・システムでは、プロセッサ単位でのソフトウェア・コード量の削減が期待できるため、開発工数の削減と開発期間の短縮、プロセッサ単位でのコード量の削減によって、バグの発生も最小限に抑えることが可能になる」と説明した。
堀内ディレクタによれば、NIOS IIのマルチコア構成をサポートしたRTOSはこれまでなく、 「TOPPERS-Proマルチ/FDMP」が世界で最初の商用製品とのこと。

TOPPERSプロジェクトの高田広章会長(名古屋大学)は、TOPPERSプロジェクトが対称型マルチプロセッサ・システム(SMP)に対応したTOPPERS/JSPカーネルの開発についても、すでにその仕様作成を終え、その仕様に準拠したカーネルの開発を進めていることを明らかにした。このSMP対応の仕様はすでにTOPPERS会員向けに公開されている。

プレス発表の全文は、http://www.toppers.jp/press/release-0704-1.pdf



PC用プロセッサだけでなく、組込みシステムにおいてもマルチコア・プロセッサ・システムの採用が進んでくるのは避けられない情勢である。最新の半導体技術を利用すれば、多様なアーキテクチャによるマルチコア・プロセッサの実現は比較的容易だ。しかし、問題はプロセッサ・ベンダが、ソフトウェア開発とデバッグを効率的に行う方法をどのような形でユーザに提供できるかである。マルチコア・ベースのプロセッサ・ベンダは、上流設計ツール、RTOS、コンパイラ、ICEなどの各ベンダとの協力を得て、使いやすい包括的な開発環境、いわゆるエコシステムを提供しなければならない。最近は、プロセッサ自体のアーキテクチャや性能以上に、このエコシステムの優劣がビジネスを左右しそうな情勢である。これらの要求に対処するため、海外の主要なRTOSベンダはマルチコアへの対応を急いでいる。日本国内でも、T-EngineフォーラムがT-Kernelのマルチコア対応を進めており、昨年6月にAMP対応のAMP T-Kernelの開発に成功したことを発表している。また、イーソル社ではすでにARM社のMPCoreをサポートしたeT-Kernel Multi-Core Editionを発表している。これはAMP、SMPの双方に対応する。
マルチコア対応のRTOSや開発環境については、今後も大きな動きが出てきそうである。

レポータ:EIS編集部 中村正規

 

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