記者会見 NO-18
ETロボコン2012 開催記者発表会 2012年2月14日 於:東京港区

社団法人組込みシステム技術協会(JASA)が若手の組込みソフトウェア技術者の教育・育成を目的に主催している、「Embedded Technology ソフトウェア・デザイン・ロボット・コンテスト」(略称:ETロボコン)が、今年で通算11回目を迎え、都内でその開催概要を説明する記者発表会を実施した。


初心者が参加しやすい大会に向けて、さまざまな工夫と改善を実施
2002年にUMLロボコンの名前でスタートしたこのイベントは2005年からJASA主催のETロボコンと名称を変更し、今年で通算11回目の開催となる。このコンテストはLEGOマインドストームNXTという共通の走行体を使用し、実装するソフトウェアによって走行性能を競う共に、そのソフトウェア作成のためのモデリング技術も審査対象にしている。このロボコンへの参加者は2007年頃から急速に増加し、昨年は1,900名ほどの学生、若手技術者が参加している。これと共に、参加者のレベルも年々向上しており、昨年は優れたモデルを提出し、コース内に設定された難所を次々にクリアする優れた走行性能を見せたチームも多く現れた。その一方で、走行、モデリングの双方で組込みソフトの初心者と上級者とのレベル差が目立つようにもなってきている。冒頭の挨拶に立った実行委員長の星光行さんは、「上級者のみが目立ちすぎて、初心者の参加するハードルが高くなるのは芳しくないので、今年は初心者でも参加しやすい工夫や改善を行う」と述べた。初心者が入賞できる可能性が低くなっていることが、ここ数年における参加チーム数伸び悩みの原因のひとつと捕えているようだ。

星光行 実行委員長           ETロボコンの参加チーム、参加者推移


主催者および実行委員会では、これらの改善、工夫を実施することで、今年は380チームの参加を見込んでいる。 大会は全国11地区での予選会が9月初旬から順次、開始され、上位計40チームが11月14日から組込み総合技術展(ET2012)に併催されるチャンピオンシップ大会に出場できる。

コース、ルールの一部変更を検討中

曽根卓朗 技術委員長代理

本部技術委員会委員長代理として開発環境を含む競技内容を説明した曽根卓朗東海地区実行委員長は、「競技方法、走行体、コースなどについては、基本的に昨年のものを踏襲する。」と述べた上で、走行時間をマイナスできるボーナス・ステージの難所については、一部の変更を検討していることを明らかにした。そのひとつが、昨年現れた3点接地走行への対応だ。



昨年の大会では、自律停止用に追加された尻尾を下したまま、2つの車輪と尻尾の3点で接地走行を行い、想定外の脅威的なタイムをたたき出したチームが現れた。曽根氏は、今年もこの3点接地走行を禁止しないことを明らかにしたが、同時に「2輪倒立振子制御が必須になるコースまたは、難所を設定することを検討している。」と述べた。また、尻尾部の形状を変更する可能性も示唆した。一方、組込み機器が外部の組込み機器やPCなどの外部機器との通信、連携が一般化していることから、昨年から解禁したBluetoothの使用を必須、またはボーナス・ポイント付与にする方向で検討していることも明らかにした。

参加者が利用可能な開発環境としては、倒立振子制御用のCライブラリが提供される他、μIRONベースのTOPPER/JSP、TOPPERS/ASP、OSEK RTOS搭載のnxtOSEK、にアップウィンドテクノロジー社のUTOSなどに加えて、新たに初心者向けに軽量Rubyが使用できる環境を提供する準備を進めているという。

走行体の詳細


初心者にフォーカスしたモデリング教育と出場チームも参加するモデル審査
ETロボコンでは、走行体によるタイム競技だけでなく、モデリングの優劣も審査され、順位が決定される。参加チームには、事前にモデリングの方法から実装までプロセスを指導する技術教育が実施されている。モデル審査の説明にあたった本部審査委員長の渡辺博之氏は、参加者のモデリング技術が年々向上していることを認めながらも、「ETロボコンの参加チームに実施しているモデリングの技術教育は、これまで初心者から経験者まで幅広くカバーしすぎたため、初心者にとってモデリングの作業が高いハードルになってしまったきらいがある。」と反省点を述べた。そして、「今年は、スキルアップの前にモデリングの価値を実感してもらうよう、初心者に重点を置いた教育に方向転換する。」と述べ、今年からモデリングの初心者にフォーカスした教育、技術指導を行うことを明言した。また、渡辺氏は、「これまでモデルの審査は審査委員会のメンバーだけで行ってきたが、今年から参加チームが他のチームのモデルを評価し、優秀なモデルに投票する制度を設けたい。」と新しい方向性を提示した。ただし、この出場チームによる投票制度は、11月のチャンピオンシップ大会に限定される見込みである。また、各審査委員のイチ押しモデルを公開して、審査委員個人の顔が見えるようにもしたいとの意向も示した。

2012の参加受付は3月5日〜4月6日。 教育機関に仮登録を提供。
ETロボコン2012の参加受付は3月5日から開始され、4月6日に締め切られる。希望者はETロボコンの公式ホームページから各地区大会への参加を申込むようになっている。大学、高専、専修学校、高校の各教育機関では、新学期にならないと参加できる学生が確定しないこともあることから、今年からこれら教育機関に限って仮登録を認め、5月8日まではキャンセルを認めることとした。この仮登録制度の新設によって、学生チームの参加が増えることを見込んでいる。各地区大会の実施説明会は2月末から開始されるが、その日程、参加費の詳細、各地区大会の会場、開催日などの詳細については、ETロボコンの公式サイトで確認することができる。
なお、ETロボコンの後援団体である情報処理振興機構(IPA)では、昨年からチャンピオンシップ大会にIPA賞を贈呈したが、今年から各地区大会でも優秀チームにIPA賞を進呈することになったことが発表された。また、ETロボコンの主催者と事務局では、このイベントの国際展開を図るべく、JASAの提携団体である、台湾コンピュータ協会(TCA)と協力し、2013年に台湾での地区大会の実現に向けて準備を進める意向であることも発表された。
主催者側では、ETロボコンをバックアップするスポンサー、ボランティアも幅広く、募集中である。
詳細はETロボコン2012の公式ホームページ:http://www.etrobo.jp/2012/

2012年2月 取材:中村正規

 

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