記者会見 NO-6
日本テレロジック、アジア市場向け製品戦略/要件管理ツール新製品発表会

リポータ:EIS編集部 中村

スエーデンのUMLツール、要件管理ツールなどの世界的な企業であるテレロジック社の日本法人、日本テレロジック社がアジア市場向けの製品戦略と新しい要件管理ツールの新製品、DOORS XTの発表記者会見を東京都内で開催した。この記者会見には、本社の社長兼経営最高責任者(CEO)である、アンダース・リドベック氏が参加した。

テレロジック社の概要

テレロジック社は、もともとスエーデン・テレコム社の一部門として出発した。社名である、「テレロジック」の「テレ」がそのルーツを示しているようだ。同社はUMLのモデリング・ツール、TAUで日本市場でも高い実績を残しており、2000年にQSS社を買収して要件(要求)管理ツール分野に、またContinuus社を買収して変更・構成管理ツール分野に進出し、これらのツールで世界的に高いシェアを獲得している。同社はこれらのツールを連動させたプロジェクトの開発手法を「要求駆動型の開発」と呼び、要件定義からテスト、変更・構成管理までの一貫した開発プロセスをサポートしている。
同社は1999年にスエーデンで株式公開を果たし、昨年の売上高は1億4200万米ドル。欧州、北米、日本を含むアジアの各拠点に計750名のスタッフを抱えて活動しており、売上の90%以上をスエーデン国外に輸出している国際的な企業である。最近では、特に中国、インド、オーストラリアなどのアジア、太平洋地域において高い成長を果たしているようだ。

日本市場での状況

記者会見の冒頭に日本法人の代表者である、粟倉豊社長が挨拶に立ち、日本市場における活動状況を説明した。これによれば、同社の日本市場における売上高は2004年で前年比24%増の約7億円を達成。製品別の売上ではビジュアル・モデリング・ツールのTAUが全体の65%、要件管理ツールのDOORSが25%、変更・構成管理ツールのSYNERGYが10%の比率だったとのこと。テレロジック社全体の売上では、現在DOORSの比率が約50%と高く、日本市場での製品別売上比率とは大きく異なる。

日本テレロジックの粟倉社長

日本市場でTAUの比率が高いのは98年から日本の電機、通信機器業界の主力企業への営業活動を継続的に行ってきた成果であり、今後は組込みシステムの複雑化、高機能化に伴って日本市場でもDOORSやSYNERGYの採用が拡がるものと期待している。また、粟倉豊社長は、テレロジックが各ツールの日本語対応版を迅速に供給していることも強調していた。日本テレロジックは、現在、29名のスタッフで運営されており、充実したトレーニング・コースの提供を含むユーザ・サポートを精力的に行っている。

アジア市場向け製品戦略

テレロジック本社のリドベック社長

次にテレロジック本社のリドベック社長が、会社全体の状況とアジア戦略について説明した。昨年、テレロジック社は、今後5年間に企業規模を5倍にし、アジア太平洋地区では3年以内に2倍の売上を達成する計画を発表した。同社にとって、日本を含むアジア太平洋地区の市場は非常に重要な地位を占めているようだ。昨年、同社は中国で前年比64%増、インドで56%、オーストラリアで52%、日本でも25%の売上増を記録している。リドベック社長は、2005年からの2年間にアジア太平洋地区で25%増の成長が見込まれており、この地域での売上を3年以内に2倍にする当初の計画が達成できると、今後のビジネス展開に自信を見せていた。

 

アジア地域での販売には、現地語化が要求されるが、同社は今後、各主要製品の最新バージョンを中国語、日本語、韓国語の各言語でもさらに迅速にサポートできる体制を整える。これまで製品によっては英語版より古いバージョンが存在していた。今後は、これらアジア言語版でも、英語版と同じ最新の機能がサポートされることになる。同社は、まず要件管理ツール、DOORSの最新バージョンをアジア言語に対応させる。また、近く変更・構成管理ツールのSYNERGY/CMとSYNERGY/Changeのアジア向け新バージョンを投入する。さらに、トレーサビリティの機能をさらに改善させたTAUの最新バージョンについても、日本語対応版を7月にリリースする予定である。同社はこれら各ツール間の連携を強化し、大規模化するソフトウェア開発の効率および生産性向上を実現するソリューション・ビジネスの拡大を狙う。

 

新製品、DOORS XT

 

今回の記者会見の目玉は、新しい要件管理ツール、DOORS XTの発表である。テレロジック社によれば、同社は2003年で要件管理ツール市場の41%のシェアを握るトップ企業であるとのこと(ガードナー社の調査結果)。今回発表されたDOORS XTは、地理的に分散された開発チームのメンバーが一元化された要件管理定義データベースにアクセスできる機能を提供する。これによって、世界各地域に分散した数千人規模までのスタッフがDOORS XTで統合化されたワークグループを形成ことができる。また、DOORS XTは従来のDOORSとの互換性も確保されるため、過去にDOORSで作成、管理されていた要件定義情報をDOORS XT上で利用することも可能になる。
DOORS XTの基本的な機能をサポートしたスタンドアロン版(英語版のみ)は4月に入手可能であるが、DOORSの全機能およびDOORSとの互換性をサポートした拡張版は7月にリリースされる予定であるとのこと。プレスリリースの全文はこちら

組込みシステムの開発は、システムの複雑化、多様化によって、「どのような手法で品質の高いソフトウェアを効率的に開発できるか?」が大きな課題になっている。毎年、11月に横浜で開催されているEmbedded Technology(組込み総合技術展)では、「組込みシステムの生産性・品質を向上されるには、まず何から着手すれば一番効果的か?」という同じタイトルのパネル・ディスカッションが3年連続で開催されたが、年毎に聴講者が増え、日本におけるこの課題に対する関心の高まりが示されている。その点では、テレロジック社の製品群がこの課題を効果的に解決するツールとして活用される機会がますます増えることになるだろう。
組込みシステムの生産性や品質の向上というと、どうもソフトウェアばかり目がいきがちだが、組込みシステムには当然ながらハードウェアも含まれている。同社のツールを採用しようと考えるのはソフトウェア・エンジニアに偏ってはいないだろうか? SoC設計を含むハードウェアの設計者にも、これらのツールがもっと理解、活用されるべきだと感じる。

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