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横田英史の読書コーナー

サム・アルトマン〜「生成AI」で世界を手にした起業家の野望〜

キーチ・ヘイギー、櫻井祐子・訳、NewsPicksパブリッシング

2025.11.29  9:43 am

 ChatGPTを開発した米オープンAIの最高経営責任者(CEO)でスタートアップ支援企業Yコンビネータの元代表 サム・アルトマンの評伝。時の人の評伝は礼賛一辺倒のケースが少なくないが、本書はかなり批判的に実像を描いている。Wikipediaはサム・アルトマンを、「アメリカ合衆国の起業家兼投資家でプログラマー。OpenAI社の最高経営責任者でYコンビネータの元代表」と紹介しているが、本書は主に起業家兼投資家の部分に焦点を当てる。エンジニアやプログラマとしての紹介は簡単に済ませている。
     
 ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)紙の記者である筆者は、アルトマンの人格的な欠点や家族の問題などを遠慮なく、ときに辛辣に紹介する。例えば、自分の思っていることを人にやらせるために「でまかせを言う」、それがうまく行かなかった時は「相手を貶めたり」「信頼性を傷つけたりする」、誰にでも嫌われないように立ち回る、といった具合だ。
     
 筆者はアルトマン本人だけではなく、家族や友人、メンター、共同創業者、投資家、投資先、第一線のAI研究者などに、250件を超す取材を行ったという。例えばオープンAI社のアルトマンCEO解任騒動についても、社内やステークホルダー間のゴタゴタの背景や人間模様などについて、多角的に追跡しており読み応えがある。
      
 筆者の描くアルトマンはかなり複雑な人格の持ち主である。スティーブ・ジョブズばりの「現実歪曲空間」を生む力があるとともに、決断力と楽観性に富む人物である。自分についてこれない人間は相手にせず、一人で突っ走るタイプだという。アルトマンが政治的な野心をもつ人間で、人間の寿命延長と若返りの研究にのめり込んでいることを、本書で初めて知った。友だちにはしたくないが、興味深い人物であることは間違いない。AI時代のキーマンの一人の実像に迫った1冊でお薦めである。

書籍情報

サム・アルトマン〜「生成AI」で世界を手にした起業家の野望〜

キーチ・ヘイギー、櫻井祐子・訳、NewsPicksパブリッシング、p.488、¥2530

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。