横田英史の読書コーナー
人間の測りまちがい〜差別の科学史〜(上)
スティーヴン・J・グールド、鈴木善次・訳、森脇靖子・訳、河出文庫
2025.3.8 11:52 am
知能指数をはじめ、科学の体裁をとりながら人間の知能を測ることの妥当性を検証するとともに徹底的に糾弾した書。人種差別や女性差別を裏付ける“科学的”証拠として政治に利用されてきた歴史を明らかにする。上巻では、脳の大きさによって知能を測る「頭蓋計測学」、知能を数値化する「知能指数」をやり玉に挙げる。著者は進化論の第一人者の進化生物学者で科学史家。過去の実験のデータや文献を入手し、徹底的に読み込むとともに再検証しており、執念の凄まじさに感服する。上下1巻で700ページを超える大著だが、科学の在り方に関心を持つ方に強くお薦めできる1冊である。
筆者が批判するのは、人種や階級、性別などによる社会的差別を自然の反映とみなす「生物学的決定論」。生物学的決定論の妥当性を裏付けるために、データの捏造や差し替え、恣意的な解釈などが行われたことを明らかにする。例えば知能指数(IQ)については、知能は遺伝的であり、単一知能という理論に対して異論を申し立てる。IQは考案者が「使用上の注意」を促していた。しかし優生学に悪用されるなど、“注意書き”は完全に無視された。
書籍情報
人間の測りまちがい〜差別の科学史〜(上)
スティーヴン・J・グールド、鈴木善次・訳、森脇靖子・訳、河出文庫、p.376、¥1650

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)
1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。
*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。
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