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横田英史の読書コーナー

生成AIスキルとしての言語学〜誰もが「AIと話す」時代におけるヒトとテクノロジーをつなぐ言葉の入門書〜

佐野大樹、かんき出版

2024.3.31  12:39 pm

 本屋にずらりと並ぶ生成AI本とは一線を画する書。Googleで生成AI開発に従事する言語学者(Analytical Lingusit)が、言語学の知見を動員して「生成AIの能力・知識・スキルを引き出すコミュニケーションのツボ」を紹介する。生成AIとのコミュニケーションに使うのは自然言語である。だったら、自然言語を研究対象にする言語学(あるいは言語学者)の出番という訳だ。プロンプト生成の仕方を、体系的・構造的に論じており説得力がある。生成AIに興味を持っている方にお薦めの1冊である。
          
 生成AIは、質問に対する回答を単純に返すのではなく、人間と対等とも思える関係で「対話」ができるところに特徴がある。アシスタントというよりは、「相棒」「パートナー」としての活用が期待できる。例えば生成AIと対話することで、自分だけでは辿り着けない新しい発想や価値観に出会える可能性が生まれる。筆者は、その可能性を高めるコツを伝授する。
       
 筆者は、生成AIに対するプロンプト生成で、どういった選択肢が考えられるのか、その選択肢のなかからどの言葉を使うのが適切か、言葉の使い方によって回答にどのような変化があるのかを、言語学的に明らかにする。
        
 評価やフィードバックを受ける場合にも、生成AIが役に立つというのは興味深い。評価で上司から批判的なフィードバックがあっても、生成AIと対話を重ねることで建設的な内容に言い換えることができる。ネガティブな評価にも、ポジティブな内容が含まれる。感情に左右されない生成AIなら、内容を再構築して建設的に変えることができるとする。

書籍情報

生成AIスキルとしての言語学〜誰もが「AIと話す」時代におけるヒトとテクノロジーをつなぐ言葉の入門書〜

佐野大樹、かんき出版、p.352、¥1870

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。