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横田英史の読書コーナー

半導体ビジネスの覇者〜TSMCはなぜ世界一になれたのか?〜

王百禄、沢井メグ・訳、日経BP

2024.1.20  6:43 pm

 飛ぶ鳥を落とす勢いのTSMC(台湾積体電路製造)の歴史、経営方針・戦略、経営陣、組織、ガバナンス、コンプライアンス、知財戦略、将来戦略などについて、台湾のジャーナリストが詳細に綴ったビジネス書。創業者であるモリス・チャンの経歴や経営哲学、UMCやエイサーといった台湾企業との関係、インテルやサムスンに対する競争優位性にも触れる。最後に、緊迫化する中国との関係、電力や水資源の不足など、TSMCが今後10年に直面するリスクの数々についても言及する。
      
 筆者は、TSMCの競争力の源泉として次の7つを挙げる。①制度は米国式だが、リーダーシップは台湾式、②2万人の人材を抱える研究開発・技術チームと投資、③一流で実践的な企業文化、④卓越した技術と知財戦略、⑤完成されたサプライチェーン、⑥競争力のある報酬制度、⑦革新的なビジネスモデルである。筆者はそれぞれについて分析を加え、他の台湾企業やインテル、サムスンなどに対する優位性を明らかにする。
      
 勝てば官軍の雰囲気が漂う書だが、TSMCについて知っておくべきポイントを的確に押さえているのも確か。国家安全保障と密接に関係する半導体のサプライチェーンに脚光が当たる今、一読に値する書である。

書籍情報

半導体ビジネスの覇者〜TSMCはなぜ世界一になれたのか?〜

王百禄、沢井メグ・訳、日経BP、p.336、¥2200

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。