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横田英史の読書コーナー

調べる技術〜国会図書館秘伝のレファレンス・チップス〜

小林昌樹、皓星社

2023.6.11  8:03 pm

 国立国会図書館の元司書が、「調べる」ときのノウハウを披露した書。ベテラン書士の当たり前を意識化し、言語化している。仕事の関係で国会図書館や大学図書館のサイトで検索することが多い評者にって、実践的な役立つ情報が満載である。ツールを使い手順やGoogleブックスの使い方なども参考になる。仕事だけではなく、趣味や文化、風習、人文社会的な事柄で調査をする方に向く。癖の強い文章なので少々読みづらいが、我慢して読む価値はある。
     
 筆者は、文化史や風俗史、趣味といった面での広告記事の大切を述べ、データベース化が遅れていない問題を指摘する。同感である。評者が在籍していた日経エレクトロニクス編集は、「読者にとって広告も情報」と位置づけていた。実際、役立ち感のある広告は少なくなかっただけに、検索に引っかからないのは残念である。
     
 豊富な事例を盛り込んでおり理解を助けてくれる。事例も、「ファースト・シューズ」という風習の期限と由来、「全米が泣いた」映画が登場したのはいつ、「立ち読み」という言葉の初出はいつ、源頼朝の刀の銘は何か、などキャッチーである。事例を楽しむのも良いが、本書が本領を発揮するのは実際に調べた時だろう。文献調査の醍醐味を、手を動かして実感していただきたい。

書籍情報

調べる技術〜国会図書館秘伝のレファレンス・チップス〜

小林昌樹、皓星社、p.184、¥2200

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。