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横田英史の読書コーナー

日本の建築

隈研吾、岩波新書

2024.3.9  12:18 pm

 国立競技場や高輪ゲイトウエイ駅、東京駅前のKITTEなどで知られる建築家・隈研吾による日本建築論。社会的・政治的・経済的・時代的な背景や建築家の置かれた立場を踏まえながら、日本建築を“ナマモノ”として論じる。村野健吾や藤井厚二、堀口捨己、吉田五十八、丹下健三といった日本の建築家たちが、日本の伝統をどのように消化・理解して、建築に生かしたのかを紹介する。建築家としてのユニークな視点での分析や充実した建築物の写真は十分に楽しめる(写真は新書版なので限界はあるが)。建築好きにはお薦めの1冊である。
       
 冒頭が桂離宮を高く評価したブルーノ・タウトで始まるのも嬉しいし、建築における京都(西)と東京(東)の対比、バウハウスなど西洋の建築との対比は興味深い。西と東の建築については、品の良さと悪さ、小ささと大きさの観点から議論を展開する。
        
 日本建築では、まず硬い素材から施工を始め、そのあとに徐々にやわらかい素材をそこにはめたりはったりしていく。この施工手順によって現場での様々な微調整が可能となり、いい加減にもゆるいモデュラーコーディネーションが、見事に合理的で柔軟なシステムとして機能する。施工の順序という時間軸が内蔵されていることが日本建築を日本建築たらしめているという。

書籍情報

日本の建築

隈研吾、岩波新書、p.256、¥1056

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。