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横田英史の読書コーナー

世界史のなかの近代日本

小風秀雅、山川出版社

2023.4.14  12:34 pm

 幕末から明治期(19世紀後半から20世紀初頭)における、日本を中心とする東アジアと欧米との関係を解説した書。大正大学での授業(30コマ)がベースになっており、質と量の塩梅がちょうど良い。教科書で知っている歴史的出来事を、もう少し踏み込んで知りたいという知的好奇心を満足させてくれる。語り口はとても平易なのでスイスイ読み進むことができる。歴史好きにお薦めの1冊である。
      
 本書がカバーするのは、開国(ペリー来航)から日露戦争まで。ペリー来航、不平等条約の締結、条約改正、憲法制定、日清戦争、三国干渉、日英同盟、日露戦争といった話題を取り上げ、世界は日本をどのように見たか、日本は近代化と国際化をどのようなプロセスを経て成し遂げたかを論じる。琉球や台湾、朝鮮など、今に続く問題にも触れており、とても勉強になる。
      
 興味深いのは、当時すでに、日本をはじめとするアジアと欧米とが一体化していた点である。欧州の情勢がアジアに直接影響を及ぼすようになり、逆にアジアの変化が欧州に波及した。世界の一体化が感じられる。英国のプラントハンターが、横浜・金沢で見つけたヤマユリが大きな花と芳香で「驚嘆すべき美しさ」を大評判となり、「ユリの王者」と評されたエピソードも寡聞にして知らなかった。

書籍情報

世界史のなかの近代日本

小風秀雅、山川出版社、p.312、¥1980

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。