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横田英史の読書コーナー

文にあたる

牟田都子、亜紀書房

2022.12.16  10:32 am

 プロの校正者のエッセイ。10編から成る。書籍や校正への思い、校正という仕事、出版の仕組み、言葉との向き合い方などを、軽妙な筆致で紹介する。評者が携わった技術専門誌では副編集長、編集長が校正を担当しており、プロの校正者と仕事をした経験はないが、その苦労はよく分かる。本好きには、ぜひ読んでいただきたい1冊である。
      
 校正の技術として「調べる力」が必要なのはもちろんだが、さらに求められるのは「疑う力」だという。納得である。「てまひまが活字を支える」「タイトルや帯、著者名など、ミスがあるはずのない箇所に限ってミスがある」「10行足らずの校正に4日かける」など、同じ出版業界の身を置く者としてぐっとくる部分や強く共感する部分が非常に多い。「悪文をきれいにしてはいけない(カンナをかけすぎてはいけない)」「レシピの校閲は専門性が高い」という指摘には目を開かされる思いがした。

書籍情報

文にあたる

牟田都子、亜紀書房、p.256、¥1760

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。