Electronics Information Service

組込みシステム技術者向け
オンライン・マガジン

MENU

横田英史の読書コーナー

帝国の崩壊 上・下〜歴史上の超大国はなぜ滅びたのか〜

鈴木董・編著、ほか、山川出版社

2022.8.21  11:26 am

 歴史上に登場した14の帝国の崩壊プロセスを上下2巻で論じた書。超大国(スーパーパワー)はなぜ滅びたかを詳説しつつ、分断する米国の現状に崩壊の予兆を見る。ロシアや中国の行末を示唆的する内容も盛り込まれており読み応えがある。本書は朝日カルチャースクールでの講義をまとめたもの。講師の見解と個性がかなりストレートに出ており楽しめる。歴史好き、考古学好きにお薦めの1冊である。
      
 取り上げるのはアッシリア帝国、アカイメネス朝ペルシア、アレクサンドロス帝国、ローマ帝国、ロシア帝国、オスマン帝国、大清朝帝国、イギリス帝国など。崩壊の原因は、外敵による侵略、大規模工事による経済の疲弊、軍事大国の財政破綻、改革の挫折、政治的緊張感の喪失、気候変動による食料難などさまざまだ。最新の知見を取り上げ、これまでの定説を覆す内容も多く含まれており考古学好きにはたまらない。
      
 ちなみに政治的緊張感の喪失で崩壊したのはビザンツ帝国である。「世襲が進むにつれて支配体制が硬直化すし、目先の利益を追求するような稚拙な外交」が崩壊につながったとする。帝国とは到底言えない国だが、日本の現状をつい思い浮かべてしまう。

書籍情報

帝国の崩壊 上・下〜歴史上の超大国はなぜ滅びたのか〜

鈴木董・編著、ほか、山川出版社、p.240(上)p.224(下)、¥1760(上下とも)

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。