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横田英史の読書コーナー

GE帝国盛衰史 〜「最強企業」だった組織はどこで間違えたのか〜

トーマス・グリタ、テッド・マン、御立英史・訳、ダイヤモンド社

2022.7.29  10:23 am

 ウォール・ストリート・ジャーナル紙の記者が、GE(ゼネラル・エレクトリック)の凋落過程とその原因を追ったノンフィクション。名経営者とうたわれたジャック・ウェルチ時代に凋落の原因は生まれ、後継者のジェフリー・イメルトは病巣に不作為だったことを本書は明らかにする。経営者が判断を誤ると、企業は容易に傾くことが本書を読むとよく分かる。よくできたビジネス書でお薦めである。
      
 GE凋落の主な原因は、金融部門のGEキャピタルを使った会計処理の工夫で長年数字(売り上げ)を作っていたところにある。GEの業績をお化粧し、身の丈以上の配当や自社株買いの原資とした。そこに9.11やリーマンショックなどが発生し、GEマジックの歯車は逆回転し始める。結果として、多国籍コングロマリット企業の代表格だったGEは解体に至る。いまやGEは投機的銘柄となり、ダウ平均の銘柄からも外されている。
       
 冒頭こそ2017年にCEOに就任し翌年退任したジョン・フラナリーが登場するが、本書の主役はCEOを約16年務めたイメルトである。イメルトは過去の栄光を取り戻そうと、買収や海外市場の開拓、テクノロジー企業への転換を図るが、「貧すれば鈍する」でいずれも失敗に終わる。

書籍情報

GE帝国盛衰史 〜「最強企業」だった組織はどこで間違えたのか〜

トーマス・グリタ、テッド・マン、御立英史・訳、ダイヤモンド社、p.496、¥2200

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。