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横田英史の読書コーナー

世界を救うmRNAワクチンの開発者 カタリン・カリコ

カタリン・カリコ、ポプラ新書、増田ユリヤ、ポプラ社

2022.5.10  12:12 pm

 新型コロナワクチン開発につながったmRNA医療研究者のカタリン・カリコを紹介した書。故国ハンガリーでの生活、渡米時のエピソード、mRNA研究に至る経緯、研究における苦労話などを紹介する。mRNAを使った医療の原理についても簡単だが解説する。読みどころは、本人だけではなく一人娘、高校の恩師へのインタビューだろう。特に本人へのインタビューはタイムリーで貴重である。
      
 正直なところノーベル賞級の研究を紹介する書籍としては物足りない。著者がコメンテーターとして登場するワイドショーに似通った構成と内容なのは致し方ないのかもしれないが、全体に表面的な話に終始する。まるで芝居の書き割りのような内容である。「mRNAワクチンの開発者」というタイトルもミスリードである。
      
 多くを期待するのは避けた方が無難な書だが、世間話のネタと手にするのは悪くないだろう。ページ数も少なくすぐ読み終わる。それにしても、一人娘がボート競技のオリンピック選手で、2大会連続の金メダリストというのには少々驚かされた。

書籍情報

世界を救うmRNAワクチンの開発者 カタリン・カリコ

カタリン・カリコ、ポプラ新書、増田ユリヤ、ポプラ社、p.188、¥1045

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。