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横田英史の読書コーナー

DX経営図鑑

金澤一央、DX Navigator 編集部、アルク

2021.6.14  2:34 pm

 米国を中心に日本・欧州・中国など32社のDX事例を紹介した書。NetflixやWalmart、Uber、Tesla、Nikeといったメジャー企業のほか、小売、飲食、輸送、金融といった業界別にスタートアップ企業を取り上げる。中には「これがDX?」と思える事例もあるが、評者が知らなかった海外企業の事例も多く勉強になった。図を多用した分析は分かりやすい。事例からDXを学びたい方に向く書である。
   
 筆者は、顧客体験からみた「ペイン(苦痛)」と「ゲイン(利得)」に分けて各社を分析する。ペインとゲインは、同じ事象の表裏といった感はあるが、分析の仕方を工夫して納得感を高めている。もっとも分析がペインとゲインに限られており、深みに欠ける面があるのは否めない。本書が取り上げるDXには、スマホを使った業務プロセスのトランスフォーメーションが多く注意が必要である。
   
 評者が注目したのはリアル店舗とスマホを組み合わせた事例である。ECサイトのリアルのショールームを代行するb8ta(ベータと読む)のビジネスモデルや、試行錯誤を重ねたWalmartを興味深く読んだ。b8taは有楽町にも店舗を構えており、一度訪ねてみたい。ちなみに日本企業で登場するのはワークマン、ブリヂストン、クボタである。

書籍情報

DX経営図鑑

金澤一央、DX Navigator 編集部、アルク、p.255、¥2310

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。