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横田英史の読書コーナー

問いのデザイン〜創造的対話のファシリテーション〜

安斎勇樹、塩瀬隆之、学芸出版社

2020.8.9  10:53 pm

 ワークショップのファシリテーション(進行)に関する実践書。どのように問い立てを行い、課題の解決に向けて、どのようにメンバーの対話を促していくかを解説する。展開する理論は豊富な経験に裏打ちされており説得力に富む。ワークショップだけではなく、取材や会議、プロジェクトにも応用ができそうである。東京大学の本郷生協の書籍部で、経済・経営・ビジネス分野の4位に食い込んでいるのが興味深い。

 ワークショップで創造的対話を実現する一つのポイントは、創造的な発想を妨げる「認識と関係性の固定化」を解くこと。一度習得したことを捨てる「学習棄却」が重要だと説く。本書は、ファシリテーションの定義にはじまり、問題の本質をとらえ解くべき課題を定める手順、課題に対して創造的対話を促進する方法、ファシリテータに必要なコアスキルを紹介する。最後に事例として、筆者がかかわった資生堂、京浜急行、中高生・教師向けのワークショップを取り上げる。

 本書の特徴が説明が具体的なところ。例えば問題をとらえる思考法としては、素朴志向と天邪鬼思考、道具思考、構造化思考、哲学的思考についてそれぞれ掘り下げる。目標を再設定するリフレーミングの10のテクニック、参加者の思考と対話を方向づける問いを制約するテクニックなど読み応えがある。

書籍情報

問いのデザイン〜創造的対話のファシリテーション〜

安斎勇樹、塩瀬隆之、学芸出版社、p.304、¥2970

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。