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横田英史の読書コーナー

DNA鑑定~犯罪捜査から新種発見、日本人の起源まで~

梅津和夫、講談社

2020.3.28  2:28 pm

 犯罪や親子関係、遺伝病などの調査に使われるDNA鑑定について分かりやすく解説した書。DNA、遺伝子、ゲノムについての基礎的な解説から、DNA鑑定の原理、DNA鑑定の実際まで、多くのエピソードを交えて紹介する。書き口は軽妙で読みやすい。ブルーバックスらしい啓蒙書に仕上がっておりお薦めである。

 本書の特徴は事例が豊富なところ。戦没者の遺骨収集での故人の特定、東日本大震災での身元確認、絵画の鑑定、川・湖・海の水の調査による棲む生物の同定、日本人や人類の起源、食品偽装、科捜研のDNA鑑定が抱える欠陥など縦横無尽である。

 苗の段階で品質を判断できるので育種の時間が短縮でき、植物の品種改良で威力を発揮する話は興味深い。琥珀から取り出した昆虫のDNA解析に成功した論文に異議を唱えるなど、率直な物言いも好感が持てる。新型コロナウイルスで話題になっているPCR検査についてもカバーしている。

書籍情報

DNA鑑定~犯罪捜査から新種発見、日本人の起源まで~

梅津和夫、講談社、p.256、¥1100

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。