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横田英史の読書コーナー

イノベーターズ II〜天才、ハッカー、ギークがおりなすデジタル革命史〜

ウォルター・アイザックソン、井口耕二、講談社

2019.11.8  10:03 am

 レオナルド・ダ・ビンチやアインシュタインなどの伝記を著した伝記作家ウォルター・アイザックソンによる、イノベーターたちに焦点を当てたデジタル革命史。後編は、パソコン、ソフトウエア、オンライン、Webなどをカバーする。登場人物はジョブズやゲイツ、ウォズニアック、ブリン、ペイジ、アラン・ケイ、エンゲルバート、ストールマン、トーバルズなど多彩である。筆者は時代背景や彼らを取り巻く環境をきめ細かく書き込んでおり、デジタル革命を俯瞰できる良書に仕上がっている。

 大きな成果を残しているのが幅広い人材を集めたチームだったことを明らかにする。アイデアを生み出すビジョナリーと、アイデアを形にしていく実務者の組み合わせの重要性を説く。

 読み応えがあるのは最終章の「エイダよ、永遠に」である。AI、シンギュラリティに対する持論を明らかにし、AI時代における「人と機械(コンピュータ)の共生」「人間の価値は何か」に言及する。機械との共生で人間が持ち込むのは創造性であり、人間の存在価値は「違った考え方(Think Defferent)」ができる点だと語る。人の持つ「モノやコト、思想、概念を一つにまとめ、変わり続ける独創的な組み合わせを果てしなく作り出す」能力である。

書籍情報

イノベーターズ II〜天才、ハッカー、ギークがおりなすデジタル革命史〜

ウォルター・アイザックソン、井口耕二、講談社、p.434、¥2640

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。