横田英史の読書コーナー
純粋機械化経済〜頭脳資本主義と日本の没落〜
井上智洋、 日本経済新聞出版社
2019.6.16 10:06 am
帯の「壮大なAI経済文化論」「AIがもたらす人類の変化に世界は震撼する」に惹かれて購入したが期待はずれ。筆者ならではのオリジナリティや知見に乏しく、500ページの大著だが得るものが少なかった。タイトルの「純粋機械化経済」だけではなく、「新石器時代の大分岐」「工業化時代の大分岐」「AI時代の大分岐」などキャッチーな言葉を連発するが、内容が伴わないこともあって言葉が浮いてしまっている。大上段に構えたのが、かえって仇になった感がある。網羅性は高い書なので、第1次産業革命〜第4次産業革命やAIに関する文化論について頭の整理するためには役に立ちそうである。
評者は、AIを安易に使うのではなく、並行して哲学的な考察が不可欠だと考えている。筆者の「AIが持つ巨大な力の正体を明らかにし、その哲学的な意味や経済的・社会的影響について明らかにする」姿勢には大賛成である。AIをフックにし、新石器時代や産業革命までもカバーする視点は悪くないだけに、新規性や独自性の不足は残念である。
目次は魅力的である。AI時代に日本は逆転できるか、人工知能はどこまで人間に近づけるか、人工知能は人々の仕事を奪うか、技術的失業と格差の経済理論、未来の社会は「不要階層」と「不老階層」に二極化するのか、などなどだ。考察が進んだ第2弾を待つべきなのかもしれない。
書籍情報
純粋機械化経済〜頭脳資本主義と日本の没落〜
井上智洋、 日本経済新聞出版社、p.504、¥2484

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)
1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。
*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。
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