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横田英史の読書コーナー

最後の頭取〜北海道拓殖銀行破綻20年後の真実〜

河谷禎昌、ダイヤモンド社

2019.3.15  9:59 am

 破綻した北海道拓殖銀行(拓銀)の最後の頭取を務め、特別背任罪で実刑判決を受け収監された著者の話を、朝日新聞の記者が聞き書きした書。拓銀でバブル期に踊り、破綻の原因を作った経営層に対する筆者の批判は、実名で登場するだけに迫力がある。北海道銀行との合併話がご破算になる経緯など実に生々しい。逆に本書の前半は、生い立ちや刑務所の話に充てており少々冗長。お急ぎの方は、この部分を読み飛ばした方がいいかもしれない。

 バブル期に拓銀は、インキュベーター路線と呼ぶ経営戦略をとり、不動産業やレジャー産業に肩入れした。建設会社でザ・ウィンザーホテル洞爺を開業したカブトデコムの社名は今でも覚えている。拓銀は、インキュベーター路線が仇となりバブル崩壊とともに経営破綻に至る。

 筆者は大手銀行の幹部で唯一収監された人物である。札幌地裁で無罪判決を得たものの、高裁で逆転判決。最高裁でも高裁判決が維持され、実刑が確定した。筆者は、これを「国策裁判」と厳しく批判する。人質司法など日本の司法制度が抱える問題にも関係しており、このあたりはもう少し詳しく知りたいところだ。

 「歴史は繰り返さないが、韻を踏む」と言われる。忘れ去られようとしているあの時代を振り返り、教訓を得るには悪くない書である。

書籍情報

最後の頭取〜北海道拓殖銀行破綻20年後の真実〜

河谷禎昌、ダイヤモンド社、p.288、¥1944

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。