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横田英史の読書コーナー

日本の企業家13:小倉昌男〜成長と進化を続けた論理的ストラテジスト〜

沼上 幹、PHP経営叢書

2018.12.3  10:26 am

 宅急便というイノベーションを生んだ小倉昌男の経営哲学と経営戦略、思考法、組織洞察力、学習過程を経営学的に分析した書。試行錯誤を繰返しながら宅急便を生み出した経営者としての卓越ぶりも凄いが、クール宅急便やスキー宅急便といった事業展開の中で自らも成長していく様子も興味深い。障碍者支援に経営の視点を持ち込んだ斬新さにも感服する。

 経営学者の筆者は、多くのエピソードを盛り込みながら納得性の高い議論を展開している。経営者だけではなくビジネスパーソンが学ぶべき点を提示しており役立ち感がある。改めて宅急便というイノベーションから学ぶのも悪くない。多くの方にお薦めできる1冊である。

 筆者は、経歴を振り返りつつ人格形成の過程を明らかにするとともに、経営者としての成長、思想、哲学について言及する。経営者・小倉を特徴づける特質を4つ挙げる。事業戦略における論理性の高さ、障碍者支援にみる倫理感、豊かな感情を持ちつつ感情表現を要請するシャイネス、そして厳しさである。それぞれについて、具体例を示しながら分析を加える。

書籍情報

日本の企業家13:小倉昌男〜成長と進化を続けた論理的ストラテジスト〜

沼上 幹、PHP経営叢書、p.470、¥3343

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。