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横田英史の読書コーナー

「文系学部廃止」の衝撃

吉見俊哉、集英社新書

2016.4.12  6:51 pm

 文部科学省が2015年6月8日に国立大学法人学長宛に出した通知「国立大学法人等の組織及び業務全般の見直しについて」が、「文系学部が廃止される」と解釈され騒動になったのは記憶に新しい。本書はメディア論で知られる吉見俊哉 東大教授が通達の真意と騒動の真相、文系学部の今後の在り方について論じた書。短期的な答えを出すことに長けた理系と、目的や価値の新たな軸を発見・創造する文系の違いを明らかにし、後者こそが役立つと説く。理系の評者としては頷けないところもあるが、傾聴すべき論考であるのは確かだ。

 今回の通知は、そもそも2013年に出された通知の焼き直し。目新しいところはないという。しかし安倍政権批判につなげようとするマスコミの空気のなかで、「文系学部廃止」というセンセーショナルな見出しが一人歩きしていったと、著者は断言する。原典に当たらないメディアや知識人を批判するとともに、政治状況の変化を読めなかった文科省にも苦言を呈している。

書籍情報

「文系学部廃止」の衝撃

吉見俊哉、集英社新書、p.256、¥821

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。