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横田英史の読書コーナー

VWの失敗とエコカー戦争~日本車は生き残れるか~

香住駿、文春新書

2016.2.11  12:53 pm

 独フォルクスワーゲン(VW)が、ディーゼル・エンジンの排ガス規制をクリアするため組み込みソフトに手を加え、試験時に無効化機能装置(ディフィート・デバイス)を働かせていたスキャンダルは記憶に新しい。本書は、世界1位をトヨタと争うVWがなぜ不正に手を染めたのかを、排ガス規制の実態に迫ることを通して探っている。1次情報にアクセスできていない点は苦しいが、排ガス規制全体の流れや国内自動車メーカーの戦略について頭を整理するのには役立つ。自動車産業と関わりがあるEIS読者の方にはお薦めの1冊である。

 本書で役立ち感があるのは、排ガス規制における米カリフォルニア州の役割を詳細に解説しているところ。2018年に大幅強化されるZEV(Zero Emission Vehicle)規制に言及するとともに、規制当局だけではなく規制策定に影響力のある組織のメンバーについて取り上げる。自動車メーカー各社のロビー活動についても詳らかにしている。知られざる実態を知ることができて役立ち感がある。後半の国内自動車メーカーの戦略は冗長な感じもするが、よくまとまっているのは確かである。

書籍情報

VWの失敗とエコカー戦争~日本車は生き残れるか~

香住駿、文春新書、p.230、¥799

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。