横田英史の読書コーナー
あの日
小保方晴子、講談社
2016.2.2 12:51 pm
STAP細胞騒動の一部始終を騒動の中心人物が振り返った手記。生命科学界の内幕にも迫っているのも興味深い。専門的な記述が少なくなく素人には真贋を判断できないが、関係者の行動を実名で綴っており覚悟のほどが分かる。糾弾された側の論理や感情を知ることができる書である。自己弁護を感じる箇所も少なくないが、読後感は悪くない。STAP細胞事件に関心のある方にはお薦めの1冊である。
さっそく週刊誌には反論が掲載されているが、双方の見解はかなり食い違っている。本書を読むと、筆者が信じるに足る証拠をがっちり握っているように読み取れる。そもそも講談社の編集者がかなり手を入れているのは間違いない。
本書は、再生医療の研究者を志した理由から始まる。早稲田大学時代、米ハーバード大学への留学、バカンティ研究室のこと、スフェア細胞の発見、理研CDB(理化学研究所発生・再生科学総合研究センター)研究室のこと、STAP細胞の発見、メディア・スクラムに対する批判、若山教授への疑惑と違和感、理研の体質への根深い不信、STAP細胞発表の舞台裏などを綴っている。
書籍情報
あの日
小保方晴子、講談社、p.258、¥1512
横田 英史 (yokota@et-lab.biz)
1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。
*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。
新着記事
-
技術革新と不平等の1000年史 上
2024.4.7 12:41 pm
-
生成AIスキルとしての言語学〜誰もが「AIと話す」時代におけるヒトとテクノロジーをつなぐ言葉の入門書〜
2024.3.31 12:39 pm
-
三井大坂両替店-銀行業の先駆け、その技術と挑戦
2024.3.26 12:37 pm
-
劇的再建〜「非合理」な決断が会社を救う〜
2024.3.22 12:26 pm
-
なぜ男女の賃金に格差があるのか〜女性の生き方の経済学〜
2024.3.18 12:24 pm
-
現代に生きるファシズム
2024.3.15 12:21 pm
-
日本の建築
2024.3.9 12:18 pm
-
アナログ・デバイセズとBMWグループが協力して業界をリードする自動車用10Mbイーサネットを提供、ソフトウェア定義型車両を実現
2024.3.8 5:59 pm
SOLUTION
REPORT
横田英史の 読書コーナー
お薦めセミナー・イベント情報
ET/IoT Technology Show
Back Number
Pick Up Site
運営
株式会社ピーアンドピービューロゥ
〒102-0074
東京都千代田区九段南4-7-22
メゾン・ド・シャルー3F
TEL. 03-3261-8981
FAX. 03-3261-8983